チャイナ・ウォッチャーの視点

2011年10月18日

»著者プロフィール

 1911年に孫文らが清朝を倒し中華民国を樹立した辛亥革命から10月10日で100周年。中国と台湾では盛大な記念行事が行われた。中国の胡錦濤国家主席(共産党総書記)は台湾に対して「平和的な中台統一」、台湾の馬英九総統(国民党主席)は「中国の民主化」を呼び掛け、表向きは原則的な立場の違いを際立たせた。しかし、両首脳の演説を詳細に読み込むと、来年1月の台湾総統選での馬総統再選を共通目標とする「国共合作」がくっきりと浮かび上がる。

 一方、日本には、孫文を支援した実業家、梅屋庄吉をテーマにして、辛亥革命100周年を祝賀し、昨年の尖閣沖中国漁船衝突事件で悪化した日中関係の改善につなげようとの動きがあった。それは一定の成果を挙げたが、中国共産党政権のイデオロギー部門の壁は厚く、梅屋は「正史」(革命史※編集部注・中国共産党による辛亥革命に対する公式の歴史評価)の中まで入り込むことはできなかったようだ。

柔軟姿勢で改善呼び掛け

 胡主席は9日、北京の人民大会堂で開かれた記念大会で重要演説を行い、孫文に学び「中華民族の偉大な復興」に全力を尽くすように訴えた。この復興実現のためには①中国の特色ある社会主義②愛国主義③平和と発展、協力――の3つを堅持するように強調。そして「中華振興は台湾海峡両岸の同胞がともに追求すべき」だとして、中台関係の改善と平和的な統一を呼び掛けた。

 この記念大会には、今年7月に死去のうわさが流れた江沢民前国家主席(前共産党総書記)が出席し、健在ぶりをアピールした。江氏はちょうど10年前、この大会堂で辛亥革命90周年の重要演説を行った。江氏と胡氏の演説を比較すると、「強硬」から「懐柔」へという中国の対台湾政策の変化がよく分かる。

 2001年は台湾独立志向の民主進歩党(民進党)が初めて国民党から政権を奪った翌年であり、江氏の演説(約3800字)のうち台湾に関する部分(約950字)は「台湾独立」への強い警戒心にあふれ、「一つの中国」の原則堅持と「1国家2制度」による平和統一を声高に訴えた。

 一方、胡氏の演説(約3100字)の台湾部分は約450字と江氏演説の半分ほどに短くなった。台湾の人々を刺激しないよう「一つの中国」や「1国家2制度」などの強い要求は避け、「大陸と台湾は、(台湾海峡)両岸同胞の共同の家」という軟らかい言葉で中台の一体性を表現した

 「台湾独立反対」をひと言は述べたが、全体のトーンは軟らかく「1992年合意」に基づいて引き続き、中台関係を強化するように呼び掛けた。92年合意は「一中各表」(一つの中国について中台が各自表明する)との合意なき合意だから、断固として「ひとつの中国」の原則を台湾にのませようとした江氏とは大きな違いだ。

 江時代の対台湾強硬策はすべてが裏目に出た。96年、台湾で初の総統直接選が行われた際、中国は台湾近海にミサイルを発射して威嚇したが、独立志向の李登輝総統(当時)が圧勝。2000年3月の台湾総統選の直前、当時の朱鎔基首相は恐ろしい形相で、武力行使の可能性を示唆して台湾独立阻止を表明したが、総統選では、民進党の陳水扁候補が初当選を果たした。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る