解体 ロシア外交

2011年10月28日

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 プーチン首相がロシアの次期大統領に再び就任し、今度は恐らく2期12年(これまでロシア大統領の任期は4年だったが、メドヴェージェフ時代に6年に延長された)にわたり、ロシアの最高権力を握ることは確実な情勢だ。

プーチン外交の最初の一手は

 大統領は、ロシアでは絶対的存在であり、軍最高司令官を兼任するとともに、首相任命や全閣僚解任などの権限を持つだけでなく、外交も握っている。そこで諸外国はプーチン氏がどのような外交を繰り広げてくるか、戦々恐々としているのだが、プーチン氏や側近は、対外政策についてはこれまでの路線に変更はないと明言している。しかし、大きく変わりそうなのが、「近い外国」に対する外交だ。

 筆者は、別稿(「プーチン政権再来とその対外政策の展望」:シノドスジャーナル)でプーチン外交の大枠の予想、すなわち対欧米、対日外交の展望とともに、プーチンが旧ソ連地域の統合を狙う「ユーラシア同盟」の創設を打ち立てたことを論じた。その背景には、ロシアが主導するCIS(独立国家共同体)およびCIS安全保障条約機構の弱体化とロシアの旧ソ連諸国に対する影響力の低下があることは間違いない。

 それでは、「ユーラシア同盟」とは何か? 10月4日、プーチン氏は、周囲に何の相談もなく、「ユーラシア同盟」創設の構想をイズベスチャ紙への寄稿で発表した。同氏は、数ヶ月前にロシア、ベラルーシ、カザフスタンによって組織された実務関税フォーラムの場でも同じようなアイデアについて発表していたが、当時はあまり大きな扱いを受けなかった。プーチン首相が来期の大統領になることが既定路線になったところで、新たな重要性を持つようになったといえる。

 その構想について、プーチン氏は「我々は強力な超国家的統合モデルを提案し、それは現代世界の極の1つとなるとともに、ヨーロッパとダイナミックなアジア太平洋地域を結び付けることが出来る効果的なつなぎ役となるだろう」と記している。つまり、ロシアが主導する関税同盟を旧ソ連地域で発展させ、大西洋から太平洋まで広がる大経済圏となる「ユーラシア同盟」を形成するというものだ。ユーラシア同盟は、EU(欧州連合)をモデルとし、統一通貨や中央銀行が導入され、参加国の生産ポテンシャルをはじめ、輸送ポテンシャル、インフラポテンシャルを結集することで、大きな利益を生むものと強調されている。一方、参加国の政治的な主権は保持され、また同盟として、将来的にはEUやアジア諸国ともバランスのとれた経済統合を行っていくと想定されているようだ。

ユーラシア同盟=「ソ連再建」は否定

 なお、諸外国は、この構想を「ソ連の再建を狙っているのではないか」と帝国主義的野望を危惧したが、プーチン氏はそれをはっきり否定し、加えて、同同盟は「拡大欧州の一部として自由や民主主義、市場原理など万国共通の原則に基づくもの」となり、経済の開放も積極的に推進していき、世界に開かれたものとなることを強調した。他方で、EUはすでに、ソ連が実践していた統合よりも深化しているとして、EUを揶揄すらしたのである。

 とはいえ、ソ連解体を「20世紀最大の地政学上の悲劇」と公言するプーチン氏が旧ソ連諸国への影響力を取り戻し、関係を密にしようとしていることは間違いなく、同時に、ロシアの経済的な権益を守る目的があるのだろう。「大西洋から太平洋まで」の広大な経済圏をロシアが牽引すれば、欧州とアジアの経済を直接結び付ける役割をも果たすことになり、ロシアは懸案となっているWTO(世界貿易機構)加盟問題などに悩まされることなく、大きな経済利益を生むと想定できるからだ。

 この構想は、プーチン氏の大統領への復帰の方向性が発表された後に、初めて出された方針であったため、かなりの重要性を持つものとして考えられている。その証拠に、本計画は短期間のうちに具体的な形で動き出している。本稿では、その急速に進んでいる「ユーラシア同盟」結成の動きを、具体的に追いつつ、プーチン氏の外交の真の狙いを検討してみたい。

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