世界の記述

2019年4月15日

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井上雄介 (いのうえ・ゆうすけ)

台湾ライター

1963年東京生まれ。早稲田大学法学部卒。天津南開大学へ留学経験あり。共同通信記者、時事通信上海支局勤務、衆院議員政策秘書などを経て現在に至る。

 台湾の国産潜水艦(IDS)建造計画が着々と前進している。台湾メディアの上報は、造船大手の台湾国際造船(台船)が近くIDS専用工場の建設に着手すると伝えた。陳水扁・民進党政権時代の2002年以降、17年の紆余曲折を経た計画が、ようやく日の目を見ようとしている。

 台湾は、日増しに高まる中国の脅威を前に、現在保有する4隻の潜水艦の更新と増強にこだわり続けてきた。通常動力の潜水艦は、自衛用には理想の装備と考えられている。進撃してくる敵艦隊の攻撃のほか、戦時に予想される海上封鎖の突破にも役立つためだ。

(AlexLMX/inides/MicrovOne/Oleksii Liskonih/iStock)

 台湾は当初、海外からの調達を試みたが、中国政府の圧力で各国とも二の足を踏んだ。ブッシュ政権時代の米国が一時8隻の売却を承諾したが様々な理由で中断。オバマ政権時代に入ると、幾度打診してもなしのつぶてとなった。馬英九・国民党政権末期に、海軍トップが「もう待てない」と国内建造を強く進言して計画が始動した。

 16年に台湾独立志向の蔡英文・民進党政権が発足すると、計画が加速。同年中に台船が受注し、今年ようやく工場建設にこぎつけた。 

 工場の設計プランは、ドイツ、日本、韓国の技師に委託して提出させたが、最終的に日本人退職技師のものが選ばれたという。

 工場の設計は、秘密保持に重点が置かれている。人工衛星から写真撮影ができない「密閉式」の建屋となり、鋼材など材料の加工から装備の据え付け、完成後の保守まで全作業を建屋内で行う。内部の様子が見えないよう、建屋の大扉も進水時以外は閉め切りとなる。

 台船は潜水艦の設計を、ジブラルタルの軍事コンサルティング会社、Gavron・Limited(GL)に委託。GLは、英国の潜水艦設計専門の退職技師ら約30人を送り込んだ。武器などの装備は、欧米の専門会社15社と仮契約を結んだ。

 建造費用は1号艦が約500億台湾元(約1800億円)。うち専門工場の建設費が86億台湾元。残りの400億台湾元余りは装備とシステムの費用に充てられる。IDSは8隻建造し、工場建設や機械の購入費用が分担されるため、最終的には1隻当たり約250億台湾元に下がる見通しだ。

 もちろん中国は計画に強く反発。同国外務省は1月、いかなる国であれIDSへの関与を許さないと警告しており、今後、関連の外国企業に圧力が掛かる可能性もある。

 ただ、これまでのところ計画は順調で、厳徳発国防相はこのほど「IDS計画は一切が正常に進んでいる」と述べ、1号艦は24年の10~12月に進水する見通しを明らかにした。今後の行方に注目したい。

  
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