商品開発者の高齢化も深刻な日本

世の中にないものは若い国から生まれる


前田 悟 (まえだ・さとる)  金沢工業大学客員教授

(株)SOW他複数企業特別顧問。1951年岡山県生まれ。ソニーで、世界初の無線TVエアボード、ロケーションフリーTVなどを開発。07年にケンウッドに移籍し、2008年JVC KENWOOD Holdings㈱執行役員常務に就任、2011年6月退任まで技術戦略、新規商品開発を担当する。2010年7月から、金沢工業大学客員教授、現在は複数企業の特別顧問も行っている。

家電の航路

「この人はソニーらしいなと思うような方ってご存知ですか?」と、iモードの生みの親である夏野剛さんに尋ねて教えてもらったのが、前田悟さんだ。
ソニーからJVCケンウッドに移籍していた前田さんを訪ねると、いきなり「AV機器ならぬ、AV危機」について時間を忘れて語ってくれた。
「僕は、30を過ぎて人から仕事をもらったことはない」「やれることはいくらでもある」……、前田さんの言葉に帯びる熱に、いつの間にか浮かされてしまった。
日本の家電業界はこの先どうなるのか? その航路を前田さんに示してもらうことにした。

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国連によると2010年の世界平均年齢は、29.1歳。45.1歳の日本とは16歳も開きがある。日本の大手家電メーカーの社員平均年齢も日本の平均年齢と同様に40歳を超えているところが多い。日本にいると高齢化社会が当たり前のように感じるが、その日本を中心に家電を開発して、世界で優位に働くかと言えば疑問である。平均年齢の低い世界市場を見て、商品開発者も若い人たちが中心になって行うことが必要なのではないか。

 ソニーがウォークマンを発売した1年後の1980年、日本の平均年齢は32.5歳だった。そして90年に37.7歳になり、00年になって41.5歳とはじめて40代に突入した。この頃以降、日本企業から「世の中になかったモノ」「世界初のモノ」が生まれることが少なくなり、アメリカ発のモノをフォローすることが多くなったように思う。アメリカの平均年齢をみると、80年に30代に突入したけれども、10年でも36.6歳、40代に突入するのは、なんと2040年という予測が出ている。

 WindowsやAppleは言うまでもなく、YouTubeやSkypeや、TwitterやFacebookなど世界にないモノを生み出し、市場を創り続けているのはアメリカだ。何か関連を感じざるを得ない。

 韓国でもそうだ。00年に32.1歳、10年でも37.9歳。40代になった日本の家電メーカーは、30代の韓国勢に負けた。ただ、この法則を当てはめるならば、韓国は20年には43.2歳と40代に突入する。ちなみに、中国は20年で37.1歳。今度は韓国勢が中国の家電メーカーによって苦杯をなめさせられるかもしれない。その中国も、30年には40代になる。最後まで残り成長し続けるのは、やはりアメリカということになる。

あるべき姿を示さない構造改革

 日本では構造改革という名のもと、安易に人数削減だけを考えてリストラを進めて若手の採用も抑制するから、結果、平均年齢は高いままである。これでは瞬間的に費用が減るため利益が増えるだけで、長期的な成長軌道には乗れない。構造改革を行うにしても、あるべき姿を掲げ戦略を持ってこそ企業価値が出てくる。

 私も、iPadとFacebookなどSNSのユーザーだ。iPadは、日本では簡単に手に入らないSIMフリーのモデルを台湾で買ってきたが、ユーザーのために良く考えられていることに驚いた。台湾で買ってきたものは英語版であるが、既に私のPCにインストールしてあるiTunesに接続したとたんに自動的に日本語対応になり、何ら苦労することがなかった。しかし、まだPCに劣っているところもあり、これが最終形とも思えない。例えば、PCではドキュメントの種類に関係なく保存やファイル化が当たり前に行えるが、iPadではそのためのアプリケーションを探す必要がある。

 また、Facebookも使っているが、PC、モバイル端末、携帯など、どの端末からも、かつどこにいてもアクセスでき、人とのコミュニケーションの新しい形を作ったと言える。しかし、これも5年先にはもっと異なったもの、例えばもっと幅広い新しい形でのコミュニケーションができるものが出てきているように思う。

◆WEDGE2011年7月号より

 


 


 
 

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「家電の航路」

著者

前田 悟(まえだ・さとる)

金沢工業大学客員教授

(株)SOW他複数企業特別顧問。1951年岡山県生まれ。ソニーで、世界初の無線TVエアボード、ロケーションフリーTVなどを開発。07年にケンウッドに移籍し、2008年JVC KENWOOD Holdings㈱執行役員常務に就任、2011年6月退任まで技術戦略、新規商品開発を担当する。2010年7月から、金沢工業大学客員教授、現在は複数企業の特別顧問も行っている。

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