世界の記述

2019年4月26日

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工藤律子 (くどう・りつこ)

ジャーナリスト

1963年大阪府生まれ。東京外国語大学大学院地域研究科修士課程修了。『マラス―暴力に支配される少年たち』(集英社)で第14回開高健ノンフィクション賞受賞。他、『マフィア国家―メキシコ麻薬戦争を生き抜く人々』(岩波書店)など著書多数。

 フィリピンのドゥテルテ政権は、政府を批判するメディアへの弾圧を強めている。例えば、有力オンライン・ニュースサイト「ラップラー」の最高経営責任者、マリア・レッサは、今年に入ってからいわれのない容疑で2度も逮捕、拘留された。ラップラーが、現政権の薬物取り締まり作戦における超法規的殺害を暴く記事などを書いたことが原因と見られる。

 そんな中、政府批判を展開してきた複数のオルタナティブ・ネットメディアは、2018年末から継続的なサイバー攻撃に晒されている。

 「私たちのサイトは、1カ月近くダウンしていました」

 そう語るのは、ニュースサイト「ブラットラット」の編集長、ロナリン・オレアだ。現在は、サイバー攻撃への対応をサポートするスウェーデンのNGO、クリウム・メディア・ファウンデーションの協力で、何とかサイトを維持している。クリウムは一連の攻撃について、サイバー犯罪の取り締まりを担う情報コミュニケーション技術省の国家コンピューター緊急対応チーム(NCERT)に報告したが、何の反応もなかった。

 オレアは言う。

 「NCERT は共犯者なのでしょう」

 クリウムの調査によると、犯人は、政府に批判的な独立メディアや人権団体など、20以上のサイトのリストをもとに、クラウドサービス会社IPコンバージ・データ・サービス(IPC)とネットサービス会社サニウェイ・グループ・オブ・カンパニーズ(サニウェイ)のインフラとサービスを使って、DDoS攻撃を行なっている。

情報コミュニケーション技術省の前で抗議するメディアと人権団体のメンバー(筆者撮影)

 DDoS攻撃とは、複数の機器から特定のシステムに大量のデータを送りつけて機能停止させるものだ。

 「ドゥテルテ政権が背後にいると考えています。大規模な攻撃を実行する動機も力もありますから」

 攻撃を受けたメディアや人権団体のメンバーは、3月12日の「世界反サイバー検閲デー」に情報コミュニケーション技術省、22日にはフィリピン大学マスコミュニケーション校の前で、抗議の声をあげた。そして29日、ブラットラットを含む4つのメディアが、IPC とサニウェイを相手どり、民事訴訟を起こした。

 「真犯人を突き止め、報道と言論の自由を守らなければ」

 オレアたちの闘いは、これからだ。

  
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