復活のキーワード

2011年12月19日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

経済ジャーナリスト

1962年東京生まれ。1987年早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年3月末で退社、独立。現在、経済政策を中心に政・財・官を幅広く取材、各種メディアに執筆するほか、講演やテレビ出演、勉強会の主宰など幅広く活躍している。オフィシャルHP(http://isoyamatomoyuki.com/)

著書に『2022年、「働き方」はこうなる』(PHPビジネス新書)、『理と情の狭間 大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP)、『国際会計基準戦争 完結編』(日系BP)、『ブランド王国スイスの秘密』(日経BP)など。共著に『オリンパス症候群 自壊する「日本型」株式会社』(平凡社)、『株主の反乱』(日本経済新聞社)などがある。

早稲田大学政治経済学術院(大学院)非常勤講師、上智大学非常勤講師。ボーイスカウト日本連盟理事。静岡県ふじのくにづくりリーディングアドバイザーも務める。

日経ビジネスオンライン(日経BP)、現代ビジネス(講談社)、フォーサイト(新潮社)、月刊 WEDGE(ウェッジ)、月刊 エルネオス(エルネオス出版)、フジサンケイビジネスアイ(産経新聞社)などに連載コラムなどを持ち、定期執筆している。

スイスは周辺諸国に比べて所得税率が低いだけではなく、国内でも地方が税率競争をしている。
日本は今後、地方分権を推進した場合に、税制をどうすべきなのか。
いま出ている議論では消費税の移管ぐらいだが、もっと地方の裁量を広げて、
創意工夫させれば、それぞれに特色を持った地域経済が出来上がる。

 東日本大震災の復興資金を賄うための所得増税に加えて、医療費や年金といった社会保障費を支えるための消費税増税など、かつてないほどに、税のあり方をどう考えるかが国民自身に問われている。

 一般に、税率を引き上げる「増税」を実施すれば、税収が増えると思われがちだ。だが、現実はやや違う。税率を上げた結果、個人や企業など納税者が他の地域に逃げてしまえば、税収は減ってしまう。

 逆に税率を下げても、その結果、他の地域から納税者が集まれば、税収が増えることもある。国や地方政府もカネを集めるための工夫、いわば経営努力が必要な時代になっているのだ。

 前回はスイスが金融業を発展させて他国からカネを集めている話を紹介した。ヒト・モノ・カネを集めることが経済成長の原動力となり、国家の発展をもたらすわけだが、そのカネを集める知恵だ。今回は同様に、金融機関だけでなく政府自身も税金を他国から引き込もうとしているという話を書くことにしよう。キーワードは「税制の競争力」である。

 日本でもようやく法人税を引き下げるべきだ、という声が強まってきた。さもなければ、国際競争している企業ほど海外に拠点を移してしまい、産業の空洞化が起きるというのが背景にある。

 財務省が公表している「法人所得課税の実効税率の国際比較」という資料では、国税と地方税を合わせた日本の税率は米国とほぼ同水準の41%だ。これに対してフランス33%、ドイツ29%、英国26%、中国は25%、韓国24%、シンガポール17%という数字が並んでいる。要は日本企業が国際競争している国々の方が、法人税率が軒並み低いのである。

 民主党政府は昨年決めた成長戦略の柱として法人税率の5ポイント引き下げを決め、ようやく先進国並みに税率が下がるはずだった。ところが東日本大震災の復興増税で、事実上、減税は見送られる格好になった。

個人の税制でも国際競争力が問われる

 ともかくも、法人税に関しては、国際競争が不可欠だ、という視点が広がりつつある。ところが、個人の所得税となると、あまり国際比較はなされていない。企業は税率によって移転できるが、個人は税制が変わっても国を捨てて移住するのは難しい、という考えが基本にあるのだろう。

 だが、以前、この欄でシンガポールについて触れたように、富裕層などの個人をターゲットに、国家戦略として移住を働きかける動きが広がっている。もはや個人の税制も「国際競争力」が問われる時代なのだ。

 欧州では所得税率の差によって、大金持ちが居住地を変える例が少なくない。スイスはそうした高税率から逃れた富豪が集まる国として有名だ。

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