チャイナ・ウォッチャーの視点

2011年12月17日

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富坂 聰 (とみさか・さとし)

ジャーナリスト

1964年、愛知県生まれ。北京大学中文系に留学したのち、豊富な人脈を活かした中国のインサイドリポートを続ける。著書に『苛立つ中国』(文春文庫)、『中国という大難』(新潮社)、『中国官僚覆面座談会』(小学館)、『ルポ 中国「欲望大国」』(小学館新書)、『中国報道の「裏」を読め!』(講談社)、『平成海防論 国難は海からやってくる』(新潮社)、『中国の地下経済』(文春新書)、『チャイニーズ・パズル―地方から読み解く中国・習近平体制』(ウェッジ)などがある。

 今年を表す漢字が日本と中国でそれぞれ発表された。日本が「絆」という分かりやすい一文字であったのに対して、中国が台湾と共同で選んだのは、僅かとか小さなという意味を表す「微」の一文字だ。

高速鉄道衝突事故も「微」にすぎない?

 では、どうして「微」なのかといえば「微博」(ミニブログ=中国版ツイッター)が大ブームを巻き起こしたことや、小さなことから大事件につながった――説明によれば、例えば温州の高速列車衝突事故が信号トラブルという小さな(?)ミスから生まれたことなどを指している――ことがすべて「微」という文字に繋がっていたからだという。

 だが、中国が今年は「微」だったといっても、「なるほど」と簡単に納得できるものではない。何といっても今年中国国内で起きた変化も、中国が海外にもたらした影響も決して「微」ではなかったからだ。

 では、どんな言葉が適当なのだろうか。

 私の印象では、例えば対外的な意味では中国の軍事力の拡大による周辺国への圧迫感や欧州経済危機でのパトロン的な存在感の高まりをイメージする膨張の「膨」。或いは、国内的な視点からは、上昇一辺倒だった不動産価格の下落や製造業重視からサービス産業強化への体質転換に舵を切ったことなどを受け、転換期を意味する「転」や変化の「変」などが、来年以降の未来を見通す意味でも、最も適しているように思われた。

 当然、この2つの文字は来年以降の中国を見通す意味でも重要だ。

存在感増す中国経済の一方で・・・・・・

 まず中国経済である。リーマン・ショック以降に高まった中国経済の存在感は、今年の欧州の金融危機を受けてさらに増したように感じられたはずだ。世界がそのことを強く認識するようになった今年の年末、中国は年間の貿易額を発表すると同時に、世界貿易に果たした中国経済の貢献度として20%という数字を公表して胸を張った。

 この数字は、中国の対外貿易がいかに順調だったかを示したものであるのだが、同時に中国経済が世界のGDPに占める割合が8%前後であることと比較してみれば明らかなように、中国の貿易依存度の高さと、それ故に抱えるウィークポイントを示した数字であると言えるだろう。

 事実、来年の世界貿易は大幅に縮小することが予測されていて、それを受けた中国も経済発展予測を8.5%と今年より7ポイント低く見積もっているのだ。

 中国自身も予測する貿易の失速は、第一に低迷する欧州市場によってもたらされる輸出の落ち込みから始まると予測されているのだが、今年の中国で特徴的に見られた変化の一つこそ、この中国最大の輸出先であるEUと向き合う姿勢の変化だ。

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