中国はいま某国で

2012年1月12日

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谷口智彦 (たにぐち・ともひこ)

慶應義塾大学大学院SDM研究科特別招聘教授

明治大学国際日本学部客員教授。2008年7月まで3年間外務省で外務副報道官。元日経ビジネス記者、編集委員、ロンドン外国プレス協会会長。著書に『同盟が消える日』(編訳、ウェッジ)など。(2013年1月末日現在)

 北極に寄せる関心を北京が露わにするにつれ、利害をもつ各国に波紋を呼んでいる。北極圏は第1に資源の宝庫、第2にその海が有望な航路となり得る。海の氷は融けつつあり、期待の眼は北の海に向く。

 関係国が先住民などを巻き込み、利害調整とルール作りのため作った仕組みに北極評議会(AC)なるものがある。この先、開発案件のあれこれをめぐって思惑渦巻く交渉舞台となるのが必定のACは、参加資格が3段階だ。

 決議権をもつ正式理事国と、発言だけできるオブザーバー国。それからオブザーバーにしてくれと申請中の国という範疇があり、ここに属しても一部会議に出ることができる。

 中国が、第3の範疇に加わったのは2006年のこと。米、露、加とノルディック各国の8国からなる理事国総意の承認が必要で、オブザーバーへの道は遠い。だが挙手し続ける限りACに影響を及ぼせる。かつその資金力と消費国としての存在感は、デンマークなどを北京へなびかせつつある。

 新たに国産砕氷艦を1隻追加するのだとか、ロシアの資源を大量引き取りするつもりだとか、中国の挙動が北極をめぐって注目を集めるのである。

北極の地政学変える
初夢で見る25年後

 新年号でお見せする夢として好適かどうかはともかく、四半世紀後、北極地政学に起きていたとして驚くべきでない変化とはどんなものだろうか。

 グリーンランドは、デンマークから独立している。手つかずだった膨大な油田の採掘を担うのは中国国営石油会社。北京は独立時に資金を助けて採掘権を得、艦船の寄港を認めさせた。

 アイスランドには中国のインテリジェント倉庫がある。そこから欧州、米国の最終消費者に、中国企業は即座に供給できる。誰より早く中国を北極海へ導き入れたアイスランド(10年10月号本欄参照)はまだNATO(北大西洋条約機構)の成員だが、軍事同盟はとっくに形骸化、首都レイキャビクで中国人水兵の姿をよく見る。ここも中国軍艦船の補給地だからだ。

 中国が輸入する石油、天然ガスの3割は、もはや「北から」になった。ロシアで長い政権を続けたプーチン大統領は任期中2隻の空母を就航させ、1隻を日本海の基地に配備した。経済では中国に大きく依存するが、対中交渉力を残しておきたいからだ。

 日本海は様変わりしている。朝鮮半島北部の港・元山は事実上の中国海軍基地だ。日本海から津軽海峡か宗谷海峡を抜け北極海へ向かう中国商船隊を、元山の艦船・潜水艦が守る。韓国に加担し中国が国連を動かした結果、海はいま公式に「東海」と呼ばれる……。

カナダと米国衝突
対立は中国に有利

 現実に戻ろう。デンマーク対グリーンランド、カナダ対米国など、北極地政学には現に活断層が何本か走る。

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