WEDGE REPORT

2011年5月20日

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地震と津波で徹底的に破壊された被災地のインフラは、震災後1カ月で大きく機能回復した。迅速な復旧を支えた数多くの縁の下の力持ちたち。想定外の危機に対応した各社の現場力。利用者からの信頼を獲得するために一見ムダと思えるほどの労力やコストをかける日本企業の精神性にこそ未来を切り拓く力があるのではないだろうか。

 今回の震災は、携帯電話がいかに重要なライフラインとなっているかを人びとに実感させた。3月11日の震災発生直後、携帯は首都圏を含め広範囲でつながらなくなったが、その原因は「通常の60倍というこれまでに見たことがない増え方」(福島弘典・NTTドコモ災害対策室長)で集中した膨大な通信量にある。ドコモ、au(KDDI)、ソフトバンクモバイルの3社は最大7~9割という強い発信規制をかけざるを得なかった。安否確認はまず携帯で─これは、阪神・淡路大震災のころとはまったく異なる行動様式である。

 さらに、通信各社は未曾有の被害に苦しめられた。多くの通信設備が津波で流出した上に、停電が広範囲に発生。損傷のない設備まで動かなくなった。携帯の基地局は非常用バッテリーを備えるが、通常3時間程度しかもたない。3社の停止基地局数は震災当日より翌日にむしろ増加し、計約1万4000局(このうちドコモは6720局)となった。「直後は通じたのに、その後つながらなくなったのはなぜだ、という苦情を多くいただいた」(松木彰・NTTドコモ東北支社経営企画部長)。

 3社の発表によれば、4月はじめの段階で停止基地局は計1000局(ドコモは3月28日時点で690局)程度にまで減少。4月中に通信可能エリアはほぼ正常化しており、通信各社の懸命な努力が窺われる。岩手県のツイッターなどによれば、なかでもドコモの復旧が早かったようだ。実際、小誌取材班が震災1週間後に岩手県釜石市に入ったが、ドコモは普段通り通話ができ、自衛隊なども重宝している様子だった。

想定外の燃料不足

 「マニュアルに基づき、東京の本社が指揮を執り、すぐに災害対策本部を立ち上げた。地震から1時間もたたないうちに、体制を組み現状把握に動き出した。日頃の訓練の賜物です」(荒木裕二・NTTドコモ東北支社長)。

 ドコモでは年1回、グループ全体で災害対応訓練を行っている。昨年10月、東海地震を想定して訓練をしていたことが、今回の震災においての初動で大いに役立った。

 被害を想定して、全国の支社から移動基地局車などの物資や人員の広域な支援を行うことを考えて、災害対策本部の立ち上げや一連の指示、対応などのシナリオを作成し、それに基づいた対応の訓練を行った。災害対策室は数カ月かけてこのシナリオを作成し、外部の専門家にも話を聞きながら、「残っている想定外はないかとしらみつぶしで探した」(福島室長)。

 それでも「今回の震災は規模が想定を超えていた」(同)という。例えば先述の非常用バッテリー。基地局のバッテリーが止まった上、基地局を束ねる中継局の非常用発電機の燃料が切れ、燃料を届けるための車のガソリンまで不足するのはさすがに想定外だった。

 津波で破壊された基地局については、全国から集めた約30台の移動基地局車や、1つの基地局に複数の基地局エリアを広く薄く担当させる大ゾーン方式で対応した。基地局とより上位の中継局をつなぐ伝送路の断線に対しては、衛星回線やマイクロ無線を積極的に活用した。このマイクロ無線は、現在広く普及している第3世代携帯電話の前の第2世代で使っていた技術だ。「通信量が増えた第3世代では光ファイバーに移行していたが、低コストでネットワークを構築できるマイクロ無線が今回非常に役立った」(松木経営企画部長)。

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