経済の常識 VS 政策の非常識

2012年2月23日

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 ユーロ圏の混乱が続いている。

 ギリシャがユーロ圏に留まれない、イタリアが離脱するなどの噂が飛び交っている。

 しかし、この危機は通貨危機なのだろうか。通貨危機は、これまで何度も起きている。割高な通貨を維持しようとした国が、投機家の攻撃を受け、力及ばず屈服するというのが通貨危機である。

 新しいところでは1997年のアジア通貨危機がある。92年のポンド危機も有名である。このとき、現在は哲学者、慈善家を自認する世界的投機家ジョージ・ソロス氏がポンドを売り浴びせ、安くなったところで買い戻して10~20億ドルの利益を得たと言われている。

通貨危機なら後に好況をもたらす

 なぜ通貨危機が起きるのだろうか。伝統的な危機であれば、そのメカニズムは単純だ。通貨を割高に固定すれば競争力が落ちて輸出が減少し、輸入が増え、経常収支は赤字になる。輸出競争力を高めるためには、賃金を下げて輸出物価を下げるしかないが、そんなことをするのは難しい。

 この状況では、その国は通貨を下げて輸出競争力を回復するしかないと容易に想像がつく。投機筋は、割高通貨国の通貨を大量に売り浴びせる。割高通貨国は為替レートを維持しようとするが、それは自国の外貨準備を減らして自国通貨を買い支えることだ。無限に外貨準備がある訳ではないから、いずれ外貨は尽きてしまう。そうなると、通貨は下がるしかない。投機家は、これまでに得た外貨で元の通貨を買えば大儲けという訳だ。

 しかし、通貨が下がったからと言って、通貨下落国が困るわけではない。通貨の下落によって輸出競争力が増し、経常収支の赤字は縮小する。輸出の拡大によって景気が回復する。実際、イギリスでは92年のポンド下落以後、2007年まで、すなわち、08年のリーマンショックが起きるまで実質経済成長率はプラスが続いた。通貨が下落しなければ、こんな好況は続かなかっただろう。この長期好況でイギリス人が得た利益は、ソロス氏の得た利益よりもずっと大きい。

 ただし、もちろん、困る人もいる。外貨建てで借金をしていた人だ。ポンドが半分になったら、ドル建ての債務はポンドでは倍になる。政府が貴重な外貨を減らしながら、自国通貨を買い支えるのは、こういう人を救うためである。

 政府に、勝手に外貨建てで借金をした人を救う義務はないのだが、政府とのコネクションでこういうことが起きるのだろう。

 90年代の初めまで、どの国も外貨建ての借金を大量にすることはなかった。それが危険であると誰もが知っていたからだ。ところが、90年代中ごろ以降、誰もが盛大に外貨建てで借金をするようになった。97~98年のアジア通貨危機では、韓国をはじめ、アジア新興国が軒並み外貨準備を失い、危機に陥り、通貨が暴落した。ドル建てで借金をしていた企業は、自国通貨建ての債務が膨らみ、破綻した。韓国では、わずかにサムスン電子や現代自動車などの輸出企業が生き残った。

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