世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2019年8月29日

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 ロシアでは、モスクワ市議会(定員45名)の選挙が、9月8日に行われる予定であるが、プーチン政権に反対しているアレクセイ・ナワルヌイ氏の支持者10名余が、この選挙への立候補を試み、排除された。

2018年5月のウラジーミル ・ プーチン大統領就任式前の反対抗議集会
(iStock Editorial / Getty Images Plus)

 ロシア当局によると、立候補のためには一定数の署名を集めることが必要で、かつ、署名簿を当局に提出する必要があるが、ナワルヌイ系の立候補予定者の署名には偽造された署名があるということを理由に、立候補を認めないとの決定がなされた。

 この当局の決定に対して、モスクワでは、抗議のデモが行われた。7月20日には、約2万2千人、7月27日には、1万人弱が参加した。多くのデモ参加者が、許可を得ていない違法デモに参加したとして、逮捕・拘留されている。8月3日にも数千人がデモを行ったが、機動隊等により数百人が拘束された。さらに、8月10日には、約5万人がデモに参加した。これは当局の許可を得たデモであったが、130人以上が逮捕・拘留された。2012年にプーチンが大統領になってから、最大規模のデモと言われ、多くの若者が「自由で公正な選挙」を求めて抗議した。

 この8月10日、プーチン大統領は、モスクワを逃れ、2014年にロシアが強制的に編入したウクライナの南部クリミア半島で、バイク・ショーに登場し、サイド・カーのついたバイクを運転していた。ロシア国旗を立て、ロシアによるクリミア半島の実効支配を誇示していた。抗議デモの事など、全く気にしていないかの様子だった。

 今後、この抗議デモがどういうように発展するのか、または収束するのかはよくわからない。これらのナワルヌイ支持者が選挙でどれほどの支持を集めるのかわからないが、当局がこれらの候補者が案外支持を集めかねないことを恐れて、こういう立候補妨害をしていると思われる。選挙で敗北させればいいものを、立候補を認めないとか、デモを弾圧するとかの過剰な対応をしており、結果として事態をさらに悪化させている。思い返せば、旧ソ連では、選挙操作と治安当局の残虐行為が、政権交代の引き金になった。

 ロシアで政権交代が近い将来起こる状況はないと思えるが、諸事情からプーチン大統領への支持率は漸減していくと考えられる。そして、ロシア政治は、プーチンの任期が終わる2024年に向けて、不安定の度合いを強めていくと考えられる。 

 石油価格の低迷に伴う財政面での困難、それを原因とする年金支給年齢の引き上げとロシア人高齢者の生活への悪影響などから、プーチン大統領の人気は下降線をたどるだろう。 

 プーチンが国家最高評議会のようなものを作って、その議長になり、大統領より強い権限を持つ院政構造を作り上げる(カザフのナザルバエフのまね)とか、白ロシアと国家連合を作り、その長になる(ベラルーシのルカシェンコは反対している)とか、プーチンの権力を継続させるウルトラ C があり得るが、これへの準備は今のところ行われていない。プーチンが将来のことを秘密にしていることも不安定化につながると思われる。

  
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