2024年4月25日(木)

家電口論

2019年8月31日

 今、皆さんが普通に使っている、洗濯機のほとんどの機能に「標準コース」があります。洗濯物を入れ、洗剤を入れれば、洗濯してくれるコースです。毎年のようにメーカーがリファインするコースなのですが、多くの場合、可もなく、不可もなくという感じです。「標準」とされるわりには、ちょっと頼りがいがない感じがしないでもないです。また、部屋干しにすると、臭うことがあります。なぜでしょう?

(Ramon Portelli/gettyimages)

洗濯の定義とは?

 メーカーに「洗濯とは何ですか?」と質問したことがあります。一番分かりやすいと思った答えは「衣類に付いた汚れを水に移すこと」でした。その通り、洗濯とは、汚れを分解、消失させることではありません。水に移すことなのです。

 洗濯は、5つの要素の組み合わせで成り立っています。

 それは、1)衣の種類、2)汚れの種類、3)水、4)洗剤、5)洗濯機です。

 このうち、1)に関しては、衣類のタグに付いている洗濯マークが教えてくれます。普段着ている洋服の大半は、「木綿」か「混紡」です。タフで、洗いやすいからです。

 2)汚れは大きく4種類あります。汗のような「水溶性の汚れ」、皮脂、垢のような「油性の汚れ」、繊維の間に入り込む「泥汚れ」、「その他」です。水溶性の汚れは水で洗えば落ちます。油性の汚れ、その他の汚れは洗剤が必要です。そして、泥汚れは物理的に繊維間に入った汚れで、物理的な力で叩き出して落とします。

 3)水の基本は「水道水」です。日本の水は基本的に「軟水」なので、洗濯には有利です。風呂の残り湯のを使われる人もいますが、こちらは、汗などの水溶性の汚れ、垢などの非水溶性の汚れをタップリ含んでいますので、洗濯に使った場合、洗濯物に汚れを付着させる可能性が大きいです。私はお勧めしません。

 4)洗濯洗剤は大きく3種類に分かれます。「粉末洗剤」、「液体洗剤」、「ジェル・ボール洗剤」です。溶けやすいように、扱いやすいように進化させて来た結果です。洗剤で、汚れを取るのは、「界面活性剤」と「アルカリ」です。ただしアルカリは、汚れ落としにはいいのですが、皮膚に付いて放っておくと皮膚がやられます。このため、人への害を考慮して「中性」にしている洗剤も多くあります。

 5)洗濯機は、大きく日本で主流の「タテ型」、欧米で主流の「ドラム型」に分かれます。日本ではタテ型の方が汚れをよく落とすと言われています。

「標準コース」とは何か?

 さて「標準コース」とは何でしょうか?

 上の5要素で言うと、衣種:木綿、混紡、汚れ:普通。水溶性の汚れ、油性の汚れが主、水:水道水。洗剤:自由。ただし、使用する水量対しての使用量は、各社マニュアルに詳しく書かれています。多くのメーカーが、「アタック」「アリエール」「トップ」など、具体名で書いているのでわかりやすいです。

 一言でいうと、ごく普通の洗濯条件ということが分かります。

「標準コース」だと、汚れを落としきれないのか?

 私が、標準コースで問題に思っているのは、3)の「水道水」を使用することです。

 例えば、前の晩にステーキを食べた皿があるとします。油は固化しています。さて皿を洗うにはどうしますか? お湯をぶっかけて、ほとんどの油成分を流し、その後、洗剤できれいにします。

 洗濯物の垢とかも、そうなのです。最近、共稼ぎの人も多く、洗濯は週一の人も多いと思います。垢、皮脂による襟汚れも、完全に固化、こびり付いた状態。それを水と洗剤で……。油性の汚れは、油を動く状態にして落とすのが最も効率がいいのですが、そうなりません。

 ちなみに、東京都の水道水の年平均は、16〜18℃。これでは温度が低く付着した脂分は流れ出しません。

 洗濯の目的は、衣類ケアの内、「衣類を傷めずに汚れを落とすこと」ですが、実は「標準コース」は、汚れを一番良く落とすコースではないのです。

 洗濯の化学的な環境を整えるのが水の役割ですが、水質、水量と共に水温は非常に重要なのです。

「標準コース」は「簡便コース」

 普段着を、水道水と洗剤で、洗濯1回、すすぎ2回、脱水1回(約50分)で洗うコースが、「標準コース」です。

 標準コースとは何であるかというと、「日本という国で、最も使いやすく、安価な条件で、多くの人がある程度、満足できるコース」だと言うことができます。

 汚れ落としには不利なコースですが、それなりに使えるのが標準コースなのです。

 汚れ落ちは「それなり」です。このため、汚れがひどいと思ったら「標準」という言葉に囚われず、いろいろな洗濯コースを試し、自分にあったコースを見つけることをお勧めします。


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