伊右衛門 グリーンエスプレッソ
「コーヒーのように飲む緑茶」

新関祥子さん(サントリー食品インターナショナル)


池原照雄 (いけはら・てるお)  ジャーナリスト

1950年生まれ。専門紙や全国紙の経済記者として自動車、エネルギー、金融、官庁などを担当。00年からフリーになり幅広い執筆、講演活動を展開。著書に「トヨタVSホンダ」(日刊工業新聞社)、「図解雑学 自動車業界のしくみ」(ナツメ社)など。

ヒットメーカーの舞台裏

どんな不況でも、次々と誕生するヒット商品。気になるあの商品は、いったいどのようにして生み出されたのか。舞台裏の開発秘話を丹念に追い、開発者たちの生きざまに迫ります。

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サントリー 「伊右衛門 グリーンエスプレッソ」

 緑茶なのに「エスプレッソ」と、意表を突くネーミングに惹かれる。抹茶とうま味の強い煎茶をブレンドした冷用のお茶で、香りもしっかりしている。2011年9月に年間60万ケース(1ケース24本)の計画で売り出したが1カ月で目標を突破し、急きょ100万ケースに上方修正した。

 エスプレッソを意識して容量は400グラムと、500グラムが標準的な一般の緑茶飲料より、やや少なめ。コーヒー好きの人にアピールする狙いから、容器もPETボトルでなく、コーヒー飲料で人気のある広口ボトル缶を使っている。広口にしたのは、飲む時に香りが鼻腔に届きやすくする狙いもある。

 サントリーは京都のお茶の老舗、福寿園と提携した「伊右衛門」で04年に緑茶飲料に参入し、このブランドは業界2位に付けるまでになった。しかし、参入以来の国内市場は横バイないし減少傾向が続いていた。

抹茶プラス「かぶせ茶」でリッチな味わいに

 そこで、商品企画を担当したサントリー食品インターナショナル・食品事業部の新関祥子(33歳)は、「お茶を飲む機会を増やす魅力的な商品の提案によって市場の活性化と伊右衛門ブランドの強化」を目指すこととした。開発に着手したのは10年春で、商品化までには緑茶としては長めの1年半をかけた。

 新関が描いたのは、おもに男性がオフィスでボトル缶のコーヒーを机に置いて仕事をするシーンだった。当時から、通常の缶コーヒーより容量が多く、飲みかけにキャップを締めることもできるボトル缶コーヒーの人気が急上昇していたのだ。仕事の合間に一息入れるのを緑茶でも、とイメージした。

 そして、コーヒーを楽しむ人が求めるコクや香りを伊右衛門で引き出すには、「やはり抹茶だろうな」と考えた。伊右衛門シリーズには元々、抹茶が含まれており、それがこの商品の味や風味の特徴ともなっている。新関は、その特徴を「最大限生かそう」と、商品の方向を定めた。ここまでは、比較的早い段階で固まった。

 早速、福寿園のブレンダーである茶匠と、ブレンドを意味する「合組(ごうぐみ)」の検討に入った。石臼挽きの抹茶とともに主役を演じるお茶として、茶匠は「かぶせ茶」を起用した。これは新芽の生育期に、文字通り日覆いをかぶせて育てる茶葉である。

 渋みが少なく、甘みの強いリッチな味わいをもつ煎茶となる。高温短時間で抽出することにより、その利点をより引き出すようにした。このほかの煎茶とともに、抹茶とのブレンドを進めた。だが、抹茶の合組は予想外に難航した。

 コクや香りを求めて多く配合させるため、ザラザラ感が舌に残りやすくなるのだった。新関は、味や風味だけでなく400グラムを何度かに分けて飲んでも「違和感なく最後まで飲める」ことを目標として定め、妥協しなかった。試飲によるユーザー調査は、通常のお茶の開発に比べて3倍の規模で行った。

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「ヒットメーカーの舞台裏」

著者

池原照雄(いけはら・てるお)

ジャーナリスト

1950年生まれ。専門紙や全国紙の経済記者として自動車、エネルギー、金融、官庁などを担当。00年からフリーになり幅広い執筆、講演活動を展開。著書に「トヨタVSホンダ」(日刊工業新聞社)、「図解雑学 自動車業界のしくみ」(ナツメ社)など。

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