世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年4月11日

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 Diplomat3月19日付で、印政策研究センターのBharat Karnad教授が、米国はインドが対イラン制裁に協力的でないと非難したが、インドがイランに関して死活的利益を有していることを理解していない、それに、インドも米国もミャンマーで中国に付け入る隙を与える戦略的愚行を犯してしまったが、イランで同じ過ちを繰り返したくはない、と反論しています。

 すなわち、米国のバーンズ元国務次官が、インドが米国のイラン制裁を支持せず、原油の12%をイランから輸入していることを強く非難したが、米国はインドの対イラン政策の経済的、国内的背景を理解していない。インドの国営精油所はイラン原油仕様になっており、他の原油を精製するには巨額の投資が必要になる。それにサウジの増産能力には限界があり、インドがイラン以外から十分な原油を確保できるかどうかわからない。

 また、インドのイランに対する経済的関心は原油に限らない。中国は中央アジアでインフラ計画を急ピッチで進めているが、インドもそれに対抗して、イランのChabahar港とトルクメニスタン、カザフスタン、ロシアとを鉄道で結ぶ「南北回廊」の計画を前倒しで進めており、さらに、ChabaharとアフガニスタンのDilaramを結ぶ道路の建設も支援している。

 このChabahar 港は、インドが(1)取引の中継点にできる、(2)このルートを使ってアフガニスタンの北部同盟との関係を維持し、アフガン国民一般やカルザイ政権との親善強化を図れる、(3)パキスタンのグワダル港における中国のプレゼンスに対して優位に立つことができる、というように大きな意義がある。

 さらに、インドには世界第二のシーア派人口がおり、イランのシーア派と深い関係を保っている。そのため、イラン政府は、インドのシーア派との文化的結びつきを注意深く推進し、インド政府が国内シーア派に不利な政策を取らないようにしてきた。これは米国が評価できる民主主義の実践と言える。

 オバマ政権のアジア・太平洋重視の目的は中国封じ込めであり、インドがイランとの関係を強化することは、その目的に資するものだ。インドと米国は、ミャンマーで中国に付け入る隙を与えるという戦略的愚行を犯したが、インドはイランで再び同じ過ちを犯したくはない、と言っています。

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 論説は、インドが対イラン制裁に前向きでないとの米国の非難に対し、(1)インド経済にとってイラン原油は不可欠だ、それに、(2)インドはイランのChabahar港を基点とする鉄道や道路建設で、中国に対抗するとともに、アフガニスタン支援を強化している、また、(3)インドのシーア派とイランは良好な関係にあり、インドとイランの関係強化は中国封じ込めに資する、さらに、(4)中国に付け入る隙を与えてしまったミャンマーでの愚行をイランで繰り返すべきではない、インドがイランとの関係を強化することは正当視されてしかるべきで、米国から非難される所以はない、と反論しています。

 その主張はいちいちもっともです。しかし、ここには、イランの核開発という視点が全く欠けています。米国の立場は、インドの言うことはわかるが、だからイランの核開発を放っておいて良いと言うことにはならない、インドにもイランの核兵器開発阻止のため協力して欲しい、ということです。米印両国は、非難合戦ではなく、相互理解と共通の立場を模索する努力が必要でしょう。

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