World Energy Watch

2012年4月23日

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 昨年レタスの価格が高騰した際に、大阪のレストランでシーザーサラダを注文したところ、「レタスが高いのでキャベツでいいですか」とウエイトレスに尋ねられた。

 「高いから」という直接的な表現を使うのは、大阪だからだろう。レタスの値段が上がれば、まず在庫が放出される。あるいは多少味は違うが、キャベツで代替できる。

電気という商品は市場化に適しているのか

 だが、電気はレタスとは本質が違う商品だ。「在庫を持てない」電気は需要に応じ必要な量を発電する必要がある。供給量は多くても少なくても停電を引き起こすというやっかいな商品だ。このために、常に需要量に合わせ発電量を調整する必要がある。

 レタスであればキャベツが代替品になるが、電気がないと照明はつかない。冷蔵庫もテレビも使えない。ガスでは代替できない。電気をレタスのように市場で取引すると、供給が不足した時に大きな価格上昇が起こる問題がある。市場化のメリットはないように思える。

自由化ありきで進む議論

 ところが、現在の議論は、自由化を行うことが前提となっているようだ。政府の電力システム改革専門委員会での今までの議論を見ると、制度設計を中心に話が進んでいるように思われる。

 自由化ありきの議論の背景には、理由がある。

 現在国内にある原発の停止により、火力発電所での石油と液化天然ガス(LNG)の消費量が急増、化石燃料の消費増が燃料購入費の増加を招き、やがて9電力会社の料金を押し上げることになる、ということだ。

 料金値上げを避けるためには原発の再稼働しかないが、「原発の再稼働もイヤ」、「料金値上げもイヤ」という声がある。そうした声に応え、電力を自由化すべきとの意見がある。地域独占の電力会社には無駄が多いので、自由化し競争を増やせば電力料金は下落するとの主張だ。むろん、この主張の背景には、昨年の事故以来の「電力会社は信用できない、ごまかしをやっているに違いない」という一部の政治家と世論の声もある。

電力自由化後、電気料金が上昇した英国
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 しかし、「電力を自由化すれば料金が下がる」は本当なのだろうか。詳しくは後述するが、電力自由化した英国の料金は上昇している。(右図参照)同じく自由化を行ったカリフォルニア州では、2000年から2001年にかけ電力料金の高騰と供給不安が発生した。このカリフォルニア州の問題は制度設計の不備が引き起こしたと説明されることが多いが、制度設計の問題ではなく、電気という商品が市場には適していないためという意見も根強くある。

 そこで、短期的な問題として、競争が増え結果として電力料金が下落するという見方が正しいのかを考え、さらに、需要と供給の関係で価格が変動した場合に需要がどの程度変動するか、海外の事例をもとに考えたい。

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