つまり、戦前、戦中に若い時期を生きてきたその頃の高齢者は、十分な貯蓄も資産もなく、また制度発足当初に必要な負担をする余裕もなかったからだ。しかも、当時は高齢者の数も少なく、高度経済成長の真っ只中にあり、勤労世代も毎年給料が上がり続けるなど、生活にもゆとりがあったし、その後も順調に人口も経済も右肩上がりを続けた結果、幾度となく給付額の上方改定や保険料率の引き上げがさしたる問題もなく実施されてきた。
しかし、最近では国民年金の未納問題の表面化など、公的年金にまつわる深刻な問題が噴出してきているし、みなさんも自分がいざ貰う段階まで公的年金が存続しているのか不安に思われているのではなかろうか。
ネズミ講と公的年金 本質は同じ
では、なぜ公的年金制度がうまくいかなくなったのだろうか。この問題を解くカギは人口の動きにある。
みなさんは、ネズミ講をご存じだろう。ネズミ講は、加入者がねずみ算式に会員を増やすことにより、加入時に要した金額以上の金銭を得ることを目的する組織である。
容易に分かるように、人口が有限であるため無限に会員が増えることはあり得ず、必ず破綻することから、1978年に制定された無限連鎖講の防止に関する法律で禁止されている。
健康食品を買えば毎月ボーナスを得られる「年金たまご」と称する会員システムで5万人弱の会員から約110億円を集めて2011年11月に無限連鎖講防止法違反で摘発された年金たまご事件は記憶に新しいところである。
実は、賦課方式で営まれる公的年金も本質はこのネズミ講となんら変わるところはない。
つまり、現在の公的年金の哲学として、しばしば「世代間の扶け合い」が指摘されるが、要は若い世代が拠出したお金を高齢世代の年金として流用する事実を指している。
人口動態から考えてうまくいかない
この場合、高齢世代の数が少なくそれを支える若い世代の数が多ければ多いほど、つまり公的年金というネズミ講の会員構成が、新規会員である若い世代が多く入ってくる一方、その上の会員である高齢世代が少ないピラミッド型の構造である間は、財政状況は安泰であり、その制度も永続するように見える。しかし、新規会員の数が次第に減少し、逆にその上の会員が増える逆ピラミッド型の構造になってしまうと、途端に財政状況が苦しくなり、将来的にはその制度は破たんしてしまう。
現在わが国では少子化と高齢化が同時に進行しているわけであるから、まさにこの逆ピラミッド型の状況が進行していて、公的年金制度は次第に不利になってきており、こうした状況は厚生労働省も実は認めている。
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