ルポ・被災農家の「いま」

2012年5月7日

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 日本の三大銘茶の一つに数えられる「狭山茶」。その生産地(埼玉県入間市や所沢市、狭山市など)に激震が走ったのは、2011年9月2日。国による狭山茶の市販商品の抜き打ち検査で、埼玉県産の製茶5検体のうち3検体から暫定規制値を超す放射性セシウムが検出されたのだ。7月に埼玉県が「安全宣言」を出した矢先の出来事だった。

 この事態を受けて、県は9月14日、全銘柄の出荷停止を要請し、その後、全銘柄の検査に入った。検査で暫定規制値を下回る製品にのみ「検査済みシール」を配布し、シールが貼られていない製品については、市場に流通させないなどの対策を講じた。

売上げ4~5割減で相次ぐ倒産・閉店

「東阜横田園」の5代目・横田泰宏さん。いまだ売上減が続くことに悩む

 あれから7カ月が経った。埼玉県狭山市で狭山茶の生産販売を行う「東阜横田園」の5代目・横田泰宏さんを訪ねると「現時点(4月中旬)でも売上げ4割減の状態が続いています」と話した。

 「9月の売上げはほぼゼロで、その後、12月までは例年の5割減でした。従業員にやっと給料が支払えている状態です」

 日本茶の産地の多くが、福島第一原子力発電所事故により大きなダメージを受けたが、なかでも狭山茶は、大手販売業者「橋本園」や「町田園」が倒産・閉店の憂き目にあうなど被害の度合いは大きく、横田さんのように茶業者の多くが、現時点でもなかなか戻らない売上げ回復に頭を悩ませている。

 その要因については、県の対応の甘さを指摘する声が大きい。しかし、横田さんはじめ茶業者たちの話を聞いていくと、ここまで事態が深刻化した背景として、一部茶業者の危機管理の甘さも指摘せざるを得ない。

一部茶業者の「人任せ」姿勢が大きな痛手に

 日本茶から初めて暫定規制値を超える放射性セシウムが検出されたのは、2011年5月11日。神奈川県南足柄市で採取した「足柄茶」の生葉からであった。このとき横田さんは、神奈川県で出た以上、埼玉県からも出る可能性はゼロではないと考え、すぐに自主検査を行った。同じ行動を取った茶業者もいたが、一方で5月14日に行われた生茶葉並びに飲用茶の検査後の埼玉県の安全宣言により、気楽に構えていた茶農家も多かったという。

 「私たちは被害者ですが、絶対に加害者になってはいけません。それだけに安全の根拠を示す数値を持つ必要がありました。県も検査を行いましたが、それは県内13検体の無作為抽出によるもので、多分私の茶工場を調べたものではありませんから。でも、こうした考えを持つ人ばかりではなかった」

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