2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年5月22日

 National Interest 4月29日付で、Paul R. Pillar 米ジョージタウン大学教授が、イスラエルの国家安全保障政策関係者の間からネタニヤフ政権への批判が出てきていることを紹介すると共に、イスラエルを支持することと、ネタニヤフ政権の政策を支持することとは同じではない、と論じています。

 すなわち、最近、ネタニヤフに対して批判的な言辞がイスラエルの安全保障関係者から出て来るようになった。批判されているのは、パレスチナ問題への対応だけでなく、イランやイランの核に対する政策だ。しかも発言者の中には、退職した高官のみならず、現役の高官もいる。

 例えば、パルド現モサド長官が、イランの核はイスラエルにとって生存上の脅威になっているという見方に疑問を表明、また、先週、ガンツ・イスラエル軍参謀長も、イランの指導者は合理的であり、核兵器製造を決断することはないと思う、とネタニヤフ政府と異なる見解を示している。

 さらに、4月27日には、ディスキン前シンベト長官が、ネタニヤフとバラクは自分たちが救世主であるかのように振舞っているが、彼らは救世主などではなく、イラン問題で国民を間違った方向に誘導している、軍事行動を示唆することは、イランを核爆弾製造へと走らせることになりかねない、と述べている。

 こうしたやり取りから、米国民は、1)米国では、イスラエルに関する論議は、政治的に適切でなければならない等の制約があるが、イスラエルではもっと自由活発な議論が行われている、2)ディスキンなどの発言には耳を傾けるべき内容がある、3)イスラエルの利益と、現イスラエル政権の政策とを同一視すべきではない、ということを学ぶべきだ。ブッシュ政権時代のネオコンは、イラク戦争等について国民の多数が考えるのとは違う国益を追求したが、ネタニヤフ政権にもそうした傾向がある。

 特に、イスラエル支持者を任ずる米国民は、自分が何を支持しているのか、よく考える必要がある。ネタニヤフを支持することと、イスラエルを支持することとは同じではない。一般に、外国に入れ込みすぎるのは米国の利益にならないが、自国の利益にならないような行動をする外国の指導者に入れ込むのはなお悪い、と言っています。

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 これは、米国内におけるイスラエルに関連する言論の不自由さを率直に指摘し、米国はイスラエル国内の活発な議論から学ぶところがあると指摘しているもので、的を射た論説です。


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