英語が通じない場所も
「海外といっても華やかな都市部ではありません。港から離れた場所にある倉庫での作業です。必ずしも英語が通じる場所ばかりではない」ともいう。派遣する新入社員は3人から4人でチームを作り、どこへ派遣されるかはギリギリまでわからない。派遣された国の子会社に日本人がいるとも限らない。「そこで習慣の違う人たちと一緒になって作業してくれば、どうすれば円滑に仕事ができるようになるかを感じてくるはず」と、鉄は熱いうちに打つべきである、というのが基本形だ。
毎年の採用は、「事務系で30~35人ぐらい。説明会などで海外研修の話はしますので、海外勤務が苦手な学生は、まず応募してきません」。とくに体育会系というわけではなく、自分の考え方をもった人、タフに生きられる学生たちが集まるようだ。「中国や韓国の学生たちのように貪欲になれといっても、今の日本では仕方ないのかもしれません。しかし、強くならないと日本の企業の競争力が損なわれる」ことを懸念して、強く育つ研修に挑んでもらうことも視野にあるようだ。
全新入社員を世界のリーダーへ育てる
日本郵船では入社20年間は、2、3年程度で異動するのが常識。事務系社員の4分の1が海外勤務であるため、異動は4回異動すると1回は海外勤務となる。育てるのはスペシャリストではなくゼネラリストという考え方なのだろう。頻繁に異動することで社内のあらゆる部署の仕事が見えてくることは、メリットが大きいはず。「私は10回も異動してきていますので、全社員の顔がだいたいわかります。これが社員間のコミュニケーションを活発化させている」と吉田氏は強調する。
ゼネラリストが必要な背景にあるのはグローバル化だ。昔は日本からの輸出、日本への輸入という物の流れが中心だったが、現在は顧客の輸送ニーズは多様化している。日系企業が中国で生産した製品を直接、欧米に輸送することも増えた。つまり、昔は海外に駐在して日本の様子をみていればよかったが、現在は物流の多様化で現地でのビジネスができなければ、会社の運営が成り立たなくなっている。海外に駐在する社員は、すべての業務を知っていなければならないからともいえよう。