創業は明治時代。100年以上にわたる永い社歴は、海運業の厳しい競争を生き延びてきた格闘の歴史でもある。古きよき伝統を残しつつも新しい時代の流れに乗る。それはグローバル化への対応で表現できるだろう。新入社員の戦力化を急がず、10年、20年のレンジで人を育てる。その発想から厳しい環境に追いやる、新人研修が始まった。
【会社データ】 日本郵船株式会社
設 立 :1885年(明治18年)9月29日
資本金 :1,443億円
所在地 :東京都千代田区丸の内二丁目3番2号
社員数 :1,600人
事業内容:海・陸・空にまたがる国際的な輸送ネットワークを通じた一般貨物輸送事業、不定期専用船事業、客船事業、海運周辺事業、不動産業、その他の事業など
(写真提供:日本郵船)
日本郵船は船で貨物を運ぶ海運の老舗。事業は海だけにとどまらず航空、陸運とも連携した国際的な輸送ネットワークを構築し、世界の経済活動を支える。日本と海外を結ぶほか、日本を経由せず海外から海外への物資輸送など、ニーズに対応して多角的な輸送展開も行う国際企業でもある。
社員数は約1,600人。業務別に分けると600人が船員で地上での事務職が1,000人程度という。さらに事務職のうち4分の1にあたる250人が海外勤務。世界が相手のビジネスだけに海外拠点は全世界にちらばり、併せて現地ごとに設立した子会社がある。ここで働く現地社員は56,000人。日本郵船グループでみれば、日本人はマイノリティーともいえる状態だ。
1カ月の海外研修で実学と異文化を学ぶ
生活習慣、文化、宗教が異なるグループ社員構成のなかで幅広い事業を展開し、さらにマネジメントしていくには「知識だけでなく、体も心もタフな人間じゃないと務まりません」と人事グループの吉田芳之氏はいう。タフであり世界のどこででも通用する国際人を育てることが人材教育の基本とする。この発想から出てきた研修が新入社員の海外研修。1カ月間にわたり海外に派遣し実学と異文化を学んでもらう。
「誠意と創意と熱意」の3項目がグループバリュー。海外研修を含む新人研修で意識してもらうことが最大の狙い。2009年から導入した新・新人研修は期間5カ月間。座学による知識吸収のあとは、すぐに国内の港湾施設で実施研修に入る。船のオペレーション、倉庫の在庫確認、荷物の搬出など実際の業務を学んでいく。「一人ではなくチームでやる仕事だということが、ここの段階でわかります」と吉田氏。国内での経験を積んでから最後の試練ともいうべき海外研修へ派遣する。