社食に企業の想いあり

2012年6月19日

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 南部靖之代表が1976年にパソナグループを起ち上げたころは、今よりも女性の働き方について選択肢が少なかった時代。当時、まだ学生だった南部代表は、自身で運営していた塾で育児を終えて再度働きたいと思っている主婦たちの存在を知り、人材派遣事業をスタートさせた。

 現在、グループ従業員数4,657人(2011年5月末時点)を抱えるパソナグループは、人材サービスを起点として、保育事業や障害者雇用の支援など、さまざまな分野に力を入れている。中でも注目したいのが農業支援の取り組み。社内で育てた野菜を社食で提供するという他に例を見ない取り組みも、働く社員や訪れる人に少しでも農業に興味を持ってもらうという狙いがある。

「水辺のロビー」「トマトの応接室」
農業へ意識を向ける取り組み

 東京メトロ大手町駅と日本橋駅からすぐ。オフィスビルが立ち並ぶ一角に、パソナグループの本部がある。入り口を探す際に少し手間取ってしまったのは、緑にあふれたその一角がまるでカフェのように見えたからだ。大きなガラス張りの玄関を入ると、天井の高いロビーにもさまざまな植物が植えられ、接客スペースをぐるりと囲むように流れる小川には小さな鯉が泳いでいる。「水辺のロビー」と名付けられたこの心地よい空間で、来客者たちの話は弾む。

 「農業分野への取り組みを始めたのは2003年頃からです。2000年代に入ってすぐにITバブルが弾けて、当時は失業率も高かった。人材サービスを行う会社として、雇用の場をつくっていかなければならないということで注目したのが農業でした。農業は単に農作物を作るだけではなく、農作物の加工販売や、その素材を使ったレストラン経営など、多くの雇用を生み出すポテンシャルを持っています」(広報室・中村遼さん)。

 それまでまったく面識のなかった栃木県や淡路島の農家とコンタクトを取り、一から関係を構築していった。これまで、農業に興味を持つビジネスパーソン向けの「農業ビジネススクール」や独立就農支援制度「パソナチャレンジファーム」、農業をしながら芸術や音楽の活動に取り組む“半芸半農”という新しい働き方で地域活性を担う人材を育成する「ここから村プロジェクト」など、さまざまな取り組みを行っている。昨年はパソナグループを通じて約200人の若者が淡路島に入った。「高齢化の進む淡路島では地域活性の意味も持つ」と中村さんは話す。

200種類以上もの植物を育てている

受付の天井には、かわいらしいかぼちゃが実る

 パソナグループが農業人材の育成に力を入れていることを知ってもらい、そして農業自体にもっと多くの人に関心を持ってもらうことがパソナグループ本社ビルの目的でもある。だが、このビルの“仕掛け”は「水辺のロビー」だけではない。ロビーの奥にある受付の天井では、水耕栽培でカボチャが、その隣にある畑では高照度ランプによって綿花が育てられていた。さらに進むと、「トマトの応接室」と呼ばれる応接室では、壁と天井を利用して、その名の通りトマトが栽培されている。そのほか、館内の植物工場施設や外壁をあわせると、なんと200種類以上もの植物を育てているという。

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