米国の独立記念日は良く知られているとおり7月4日。当時英国の植民地だったが、そこから独立戦争を起こして自由と平等を勝ち取ったのが1776年とされている。
ところがこの歴史は歪曲である、という一連の報道を行ったのがニューヨークタイムズ紙だ。米大陸は、もちろん米国の建国前から存在していた。誰が米大陸を「発見」したのか、については諸説がある。一般的にはコロンブス(ただし彼は最後までインドに到達した、と考えていた)、その後新大陸を認識し、ここがアメリカと呼ばれる所以ともなったアメリゴ・ヴェスプッチ。ただしこれらはあくまで白人による発見だ。
当時すでに米大陸に住んでいた先住民族も、アジアから海を伝って米大陸に到達した。その経路は南米から北上したもの、北からベーリング海を伝って南下したイヌイットに大きく分かれるが、最初に上陸したのはいつ頃でどの民族だったのか、については今も意見が分かれている。
しかし今回のニューヨークタイムズ紙の節は、それまで先住民族がそれぞれの集団を作って暮らしていた未開の地から、国際社会に開かれた場所になった礎について検証している。そしてそれによると1619年、米大陸のコロニーに最初のアフリカからの奴隷船が到着した年、つまり欧州と同様の社会階級が生まれた年を米建国の年、としている。
主に英国から新大陸に移住した人々は、自分たちだけの新天地を自分たちの手だけで切り開いたのではない。すでに祖国である欧州各国と同様の、奴隷を使役する社会を築いていた。自由と平等というきれいごとの下で、実際には米国は差別と奴隷制度の元で成り立っていた、というのが一連のレポートの主題となっている。現在のBLM運動の高まりにより、このレポートが注目を浴び、「米国の正しい歴史を子供たちに教える」という動きが起きている。
1619プロジェクトと呼ばれる一連の記事は、2019年8月「米国の真の建国から400年後」に始まった。ニューヨークタイムズが発刊する雑誌に掲載されたその序文は「1619年8月、現在のヴァージニア州の海岸沿いにある英国の植民地、ポイント・コンフォート近くの海の水平線からその船は現れた。そこにはアフリカから買われ、植民地の人々に届けられた20人近くの奴隷とされた人々が乗っていた。そこから始まった奴隷制度により国が成り立つ過程について、これまで語られることはなかった。この運命の時から400年目の今こそ、国の正しい歴史を語るべき時だ」とされている。