食の安全 常識・非常識

2012年8月9日

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松永和紀 (まつなが・わき)

科学ジャーナリスト

1963年生まれ。89年、京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち、フリーの科学ライターに。主な著書は『踊る「食の安全」 農薬から見える日本の食卓』(家の光協会)、『食の安全と環境 「気分のエコ」にはだまされない』(日本評論社)など。『メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学』(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞2008受賞。2011年4月、科学的に適切な食情報を収集し提供する消費者団体「Food Communication Compass(略称FOOCOM=フーコム)を設立し、「FOOCOM.NET」を開設した。

 前回、そもそも特定保健用食品(トクホ)がどのようなものか、説明しました。

 今、関心を集めているのは広告での表現です。キリン・メッツコーラがはなばなしく「あしたのジョー」で展開する一方で、サントリー・黒烏龍茶は“消費者庁から改善要請を受けた”と報じられました。なにが違うのでしょうか? なにが問題なのでしょうか?

メッツコーラと黒烏龍茶
どちらもマンガキャラクター登場

 個人的な見解をまずは書くと、メッツコーラのCMと黒烏龍茶のCMに、あまり大きな違いはない、と私には思えます。

 メッツコーラの話題になったCMでは、「あしたのジョー」の矢吹丈が、ハンバーガーやピザ、ポテトチップスなど脂っこい食事をもりもり食べ、「なに考えとるんじゃー」と怒る丹下段平に「これ、トクホのコーラだぜ」と笑顔で答えます。そして、「食事の際に脂肪吸収を抑える」との字幕が出ます。

 一方、黒烏龍茶のCMは、今も2種類はサントリーのウェブサイトで見られます。「笑ゥせぇるすまん」の喪黒福造が、脂っこいものを食べたサラリーマンに「脂肪にドーン 食べながら脂肪対策」と叫んでいます。現在はウェブサイトでも公開されていないバージョンで、飲んだ後に締めのラーメンへと向かう芸人のアンタッチャブル山崎弘也氏に、同じように「脂肪にドーン」と叫ぶものもありました。

 いずれも、少し古めのマンガのキャラクターを用い、中年世代の懐かしさをくすぐり、健康志向に訴えます。私から見れば、どちらも似たようなものです。

 実際に、どちらに対する批判も強く、メッツコーラのCMが盛んに流されていた5月には、フードファディズム研究で知られトクホへの批判を鋭く展開している高橋久仁子・群馬大学教授が、ウェブサイト「FOOCOM.NET」メッツコーラを厳しく批判しています。

 実は、サントリーはトクホの許可を出している消費者庁から、改善要請をされたわけでも、指導を受けたわけでもありません。真相は、消費者委員会で、委員の一部からそうした意見が出た、ということです。

消費者委員会部会で
一部の委員がサントリーを批判

 消費者委員会は、「消費者問題について調査審議し、建議等を行うとともに、消費者庁や関係省庁の消費者行政全般に対して監視機能も有する独立した第三者機関」として内閣府に設置されており、さまざまな審議に消費者(消費者団体の代表者)も参加しています。

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