シルバー民主主義に泣く若者

2012年8月9日

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島澤 諭 (しまさわ・まなぶ)

中部圏社会経済研究所チームリーダー 

富山県生まれ。1994年東京大学経済学部卒業 同年4月経済企画庁入庁。調査局内国調査第一課、総合計画局計量班、調査局国際経済第一課等を経て2001年内閣府退官。02年秋田経済法科大学経済学部専任講師、04年10月秋田大学教育文化学部准教授。12年4月より現職。

 前回は、統計データ等を使い、日本の雇用の現状と、雇用における世代間格差について見てきた。そこには、「右肩上がりの経済の中で増え続ける仕事」というすでに存在しないイメージを元に、旧来の価値観で現在の若者を批判する中高齢労働者の存在があった。しかも彼ら彼女らは日本の雇用慣行のお陰で余程のことがない限り現在の仕事を失うことのない立場に立ちながら、仕事のない若い世代に対して容赦無い言葉を浴びせ続けている。

イスの数が参加者よりも速いペースで減少している

 今回は、雇用における世代間格差のうち、新卒一括採用について考察を加える。

 現在の日本からは残念ながら雇用が急速に失われており、かつ今後も減少が予想されている。もちろん、少子化の進行により、労働者の頭数自体の減少も進行するものの、マクロの失業率が上昇しつつあるということは、雇用の減少の方が労働者数の減少よりも速いペースで進んでいることを意味している。つまり、雇用の確保をイス取りゲームに例えると、ゲームの参加者も減っているものの、それ以上の速さでイスの数が減っている状況である。

 イスの数の減少は、短期的な要因と構造的な要因とに分けることができる。

雇用調整 4つのステップ

 一般的に、景気の良い時には雇用は増加し、悪い時には減少する。これは短期的な景気変動の影響だ。日本企業の景気変動に対する雇用調整は、通常、次の4つのステップを踏む。

 第1段階は、労働時間による調整である。つまり、景気が悪化すると、企業はまず残業時間を減らすことで対応する。

 第2段階はパート労働による調整である。残業時間の調整では対応しきれなくなると、人手の調整に進むこととなるが、まっさきに減らされるのはパートやアルバイト、派遣社員等の非正規雇用者である。2008年9月に発生したリーマン・ショックに際して、多くの企業が派遣切り・非正規社員のリストラを実行して社会問題化したことは記憶に新しい。

 第3段階は新卒社員の採用の抑制である。例えば、1997年に起こったアジア金融危機とそれに続く大手金融機関の破綻により景気が悪化した際、そしてリーマン・ショック以降のいわゆる「就職氷河期」に、多くの新卒者が職に就けない事態が発生した。

 そして第4段階は正社員の削減である。景気後退が深刻化し、企業が設備投資計画の見直しに着手するようになると、正社員を削減するようになる。以上が短期的な要因(景気変動による雇用の減少)である。

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