1つの炭鉱で日本の輸入量30年分
活況に沸くモンゴルの資源開発と
高まる中国依存へのジレンマ

WEDGE11月号第2特集


吉村慎司 (よしむら・しんじ)  フリージャーナリスト・北海道国際交流・協力総合センター研究員

1971年鳥取市生まれ。同志社大学大学院総合政策科学研究科修士課程修了。97年日本経済新聞社に入社し、流通・消費分野を中心に企業取材に従事する。10年にフリーに。11年、露ウラジオストク国立経済サービス大学に短期留学。帰国後は主に日本、ロシア・旧ソ連圏の中小個人ビジネスを取材し各種媒体に寄稿してる。12年春から公益社団法人北海道国際交流・協力総合センター(HIECC)研究員も務める。

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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青空の下、林立する高層ビルと、数え切れないほどの建築クレーン。大渋滞とクラクション。モンゴルの首都・ウランバートル市中心部は、草原、遊牧民といったモンゴルのイメージとは異なる光景が広がる。

 モンゴルは急激な経済成長を続けている。2011年の実質GDPは前年比17・3%増と、伸長率で世界2位。今年も同水準での伸びが予測されている。現地在住の日本人ビジネスマンは「発展が速い。この1年だけでも、トヨタ・レクサスのような高級車がはっきりと増えました」と話す。

 成長の牽引役は、豊かな地下資源だ。日本の約4倍という国土に石炭や金、銅、原油などが眠っており、鉱物資源の採掘、輸出が好景気を生み出している。モンゴル政府は、資源開発がさらに進むことを前提に、GDPが今後5年で4倍近くに膨らむと見通す。

 2つの鉱床が今、世界の資源ビジネス関係者から熱い視線を集めている。南部にある「オユトルゴイ鉱山」(金・銅)と「タバントルゴイ炭鉱」(石炭)である。どちらも、モンゴル経済の未来はおろか世界の鉱物資源需給にも影響力を持つ重要な鉱床だ。

 「先日もオユトルゴイの現場に行ってきましたが、規模が半端じゃない。凄いの一言です」と話すのは、在モンゴル日本国大使館の清水武則大使だ。オユトルゴイは銅3600万トン、金1300トンが採れるとされる大鉱山。銅の埋蔵量については、世界最大のチリ・エスコンディーダ銅山に匹敵するといわれている。

 英・豪系の資源大手リオ・ティント社がカナダの鉱山会社を通して開発している。現時点では権益の34%をモンゴル政府、残りをカナダの鉱山会社が持つ。採掘設備はすでに大半が出来上がり、早ければ年内に本格稼働する。政府は、オユトルゴイ稼働によって来年は国全体の銅生産量が一気に2倍の23万トン強となり、20年には年間100万トン近くに伸びると見ている。

 一方のタバントルゴイ炭鉱は、石炭の埋蔵量が60億トン前後といわれ、日本の輸入量で言えば30年分に相当する。東西の鉱区に分かれ、一部ではすでに生産・出荷が始まっている。西側の鉱区は国際入札を実施し、外国企業主導で開発する計画。ここには日本の商社も手を挙げているが、今年6月の国会議員選挙の影響などで選考プロセスが止まっているところだ。この巨大炭鉱が本格稼働すれば、年間石炭生産量は今までの倍にあたる4000万トン程度に拡大するといわれる。

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吉村慎司(よしむら・しんじ)

フリージャーナリスト・北海道国際交流・協力総合センター研究員

1971年鳥取市生まれ。同志社大学大学院総合政策科学研究科修士課程修了。97年日本経済新聞社に入社し、流通・消費分野を中心に企業取材に従事する。10年にフリーに。11年、露ウラジオストク国立経済サービス大学に短期留学。帰国後は主に日本、ロシア・旧ソ連圏の中小個人ビジネスを取材し各種媒体に寄稿してる。12年春から公益社団法人北海道国際交流・協力総合センター(HIECC)研究員も務める。

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