安保激変

2012年12月5日

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小谷哲男 (こたに・てつお)

日本国際問題研究所 主任研究員

1973年生まれ。同志社大学大学院法学研究科博士課程満期退学。ヴァンダービルト大学日米関係協力センター客員研究員、岡崎研究所特別研究員等を歴任。専門は日米同盟と海洋安全保障。法政大学非常勤講師及び平和・安全保障研究所・安全保障研究所研究委員を兼務。中公新書より海洋安全保障に関する処女作を出版準備中。

 11月25日、中国海軍は空母「遼寧」上で艦載機の離発着訓練に成功し、その映像が中国のテレビ局で放送された。「遼寧」は中国にとって最初の空母で、昨年から試験航行を繰り返し、今年の9月に正式に就役した。

 折しも第18回共産党大会で、胡錦濤指導体制から習近平指導体制への移行が正式に発表されたばかりである。空母艦載機を運用する映像を公開したのは、新指導部、共産党、そして国家の威信を高めることを狙ったと考えられる。

運用にはかなりの課題が残る

 空母の武器は艦載機である。艦載機を運用できなければ、空母は大きな輸送艦に過ぎない。今回の映像を見る限り、艦載機の離発着には成功したが、中国が空母を運用していくにはかなりの課題が残っていることが指摘できる。

 はじめに、空母そのものの能力についてみてみよう。空母にまず求められるのは、艦載機の離発着のために強力な向かい風を生み出す推進力を安定的に維持することだ。昨年来繰り返されてきた試験航行は、空母の推進システムをテストするのが主な目的だった。「遼寧」はもともと旧ソ連製の「ワリヤーグ」を購入・改修したものだが、購入時にエンジンを搭載していなかったため、推進システムは国産となっている。このため、「遼寧」にとって最初の難関はエンジンの信頼性だった。中国が艦載機の運用訓練を行ったのは、これまでの試験航海で国産の推進システムの信頼性が確認できたということを示している。 

機体がかなり軽量であることを専門家が指摘

 次に空母の艦載機搭載・運用能力をみてみよう。「遼寧」は6万トン級の軽空母だ。搭載できる航空機は戦闘機に加え、早期警戒機、対潜水艦ヘリコプターなど各種併せて50機程度だろう。甲板が狭いため、複数の艦載機が同時に離発着を行うことはできない。また「遼寧」はスキージャンプ式の飛行甲板を備えている。カタパルトと呼ばれる射出機が搭載されていないため、飛行甲板の先を上方に向け、艦載機の上昇を補っているのだ。スキージャンプ式では、重い艦載機は離陸できないので、「遼寧」は軽量な航空機しか運用できない。

 今回の映像では、艦載機のショック・アブソーバ(緩衝吸収装置)が伸びた状態であったため、機体がかなり軽量であることが専門家によって指摘されている。通常、燃料等を搭載した航空機は機体が重くなり、それを支えるショック・アブソーバは圧縮されて短くなる。そのため、機体の重心は低くなるはずである。おそらく、今回の訓練は武装なしで行い、燃料も必要最小限しか搭載しなかったのだろう。

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