経済の常識 VS 政策の非常識

2012年12月13日

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 今回の選挙では、社会保障の将来問題とTPP(環太平洋経済連携協定)については明確な争点となっていないようだ。しかし、選挙が終わると、TPP参加交渉が大きな焦点となってくるだろう。

 少なからぬ人々が、TPPへの参加は国益に背くと議論している。TPPには12種類の「毒素条項」があり、日本を日本でなくなるようにするという議論もある。しかし、そのうち特に強調されることの多いISDS条項(Investor-State Dispute Settlement、投資家・国家間の紛争解決手続き)が、日本に一方的に不利であるという議論は誤解である。

 ISDSとは、外国投資家が投資先国家の協定違反によって損害を被った場合の紛争処理の手続きを定めたものである。この条項に基づいて、外国企業は相手国を国際機関に提訴できることになっている。

 TPPに参加すれば、日本は米国企業の濫訴に圧倒される、というのが反対派の言い分であるが、すでに日本が締結してきた経済連携協定は、基本的にISDS条項を含んでいる。

 日本企業は海外に膨大な投資しているのだから、外国政府の一方的な政策変更によって被害を受ける可能性が大きい。ISDS条項とは、海外における日本企業を守るものである。また、今まで日本政府が海外企業の濫訴によって多大な損失を被った事実はない。

 TPPによって、医療保険制度や食品安全基準が大きく変わることもありえない。多くのTPP参加国が、自国の医療保険制度や食品安全基準を維持したいと考えているからである。日本政府に外交交渉能力がないから、自国で禁止しているような食品の輸出先にされると心配している人さえいるようだが、そこまで日本政府は無能ではない。TPPについてのほとんどの懸念は杞憂であり、大きな打撃を受ける可能性のある産業は農業しかない。

 そもそも東アジアとのFTA交渉は積極的に進め、アメリカを含むTPPとの交渉に消極的であったら、日米中の三角形は歪んでいたから、アメリカから離れ中国との連携を強化すると言っていた初期民主党政権になってしまうのではないか。

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