世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年10月17日

 Eurasia Groupのブレマーとゴードンが、9月9日付フィナンシャル・タイムズ掲載の論説で、戦後の米国外交では英国との「特別な関係」が重要な役割を果たしてきたが、地政学的重心がアジアに移ってきた今日、日本との間でも、新たに「特別な関係」を築く必要があるとして、TPPの締結が第一歩であると論じています。

 すなわち、第二次大戦後、米国は、英国と「特別な関係」を築いてきた。グローバルな安全保障が至高の課題であり、欧州がその主戦場であった時代にはそれでよかった。しかし、今日、世界の力の重心はアジアに移っている。米国がアジアに軸足を移すことは結構であるが、米国は、新たな世界秩序に合わせ、英国以外の国とも新たに「特別な関係」を築く必要がある。その相手は、必要不可欠の同盟国日本である。

 日本以外では相手にならない。ヒュンダイがトヨタを、また、サムソンがソニーを抜いたので、韓国が新たな日本になったと言われることもある。しかし、韓国が米国の不可欠の同盟国となることはできない。韓国は中国の影響力に曝されており、また、通商面で成果を挙げているとはいえ、日本の地政学的力量には遥かに及ばない。

 日本と特別な関係を築く上では、TPP交渉に日本の参加を得て、強力な合意を達成することが必要である。TPPは、アジアへ軸足を移す米国の戦略の通商面での柱である。日本がこれに参加すれば、アジアにおいて自らの経済ルールを押しつけようとする中国に対抗できる。

 TPPは日米両国の幅広いイニシアティブの基盤ともなる。今日、中国の国家資本主義が民主主義国の資本主義に挑戦している。日米が特別な関係を構築できれば、経済面でのNATOとも言うべきグローバルな同盟関係を築く基盤となる。新たな同盟関係の下で、米国、日本その他の志を共にする諸国が、サイバー・セキュリティー、開発、国際金融など多くの分野で指導力を発揮できることとなる、と述べています。

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 この論説は、TPPが持つ地政学的側面、具体的にはTPPが米のアジアへの軸足移動、ひいては対中戦略を通商面から下支えするものであることを的確に指摘したものです。TPPを単に経済面からだけ見ていては、本質を捉えることはできません。

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