通商政策3点セット
TPP 日EUEPA 日中韓EPAをどう闘うか?


渡邊頼純 (わたなべ・よりずみ)  慶應義塾大学総合政策学部教授

上智大学文学部哲学科卒業、同大学院国際関係論専攻博士課程修了、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部、GATT事務局、外務省経済局参事官などを経て現職。

日本再生の国際交渉術

TPPだけでなく、あらゆる通商政策の交渉において、日本が抱える問題点。柔軟でしたたかな戦略的経済外交を展開していくために必要な術を、かつて日本・メキシコ経済連携協定(EPA)交渉にも深く関わった、慶應義塾大学総合政策学部・渡邊頼純教授が教えます。

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今日本の通商交渉能力が大きく問われている。日本はより包括的なものを目指すとの観点から、自由貿易協定(FTA)を「経済連携協定」(EPA)と呼んでいるが、2002年11月に発効した日シンガポールEPAを皮切りに我が国はこれまで13件のEPAを発効させてきた。

日本の貿易全体に占める
EPA対象国の比率はまだ17%

 日本のEPAはASEAN諸国をほぼカバーし、ラテンアメリカ諸国ともメキシコ、チリ、ペルーと締結、加えてスイスとの協定も発効させている。それでも日本の対外貿易全体に占めるEPA対象国との貿易の比率は約17%に留まっており、韓国のFTA貿易の比率が60%超であることを考えると、日本のEPA戦略もまだこれからという感を否めない。

 これまで締結したEPAを「第一次世代EPA」を呼ぶとすれば、これからのEPAは「第二世代EPA」という位置付けになる。その中には、中国、アメリカ、EUといった日本にとって最も重要な貿易相手国が含まれる。より具体的には、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)、日中韓EPA、日EUEPAの「三点セット」が向こう10年間の通商政策優先項目となることは必至である。

FTAの「玉突きゲーム」

 この通商政策「三点セット」は一見個々バラバラに見えるかもしれないが、実は互いに関連し、連動している。その繋がり具合はビリヤードに例えることが出来るかもしれない。

 FTAやEPAは域内優遇のシステムであるから、域外に対しては優遇が及ばず、その意味ではアウトサイダーには差別的にならざるを得ない。その点がWTO(世界貿易機関)と根本的に異なる点である。

 WTOでは最恵国待遇原則があり、貿易上の待遇は関税率をはじめ全ての加盟国に対し同等で、無差別でなくてはならない。FTAやEPAは構成国の間だけで適用される「特恵的取り決め」であり、構成国以外には関税撤廃などの特典は適用されないため、競争上の「劣後状況」が発生する。そのような競争上の不利を挽回するためにまた新たなFTAを形成するインセンティブが生じる。こうしてFTAが次々と生じるFTAの「ドミノ現象」が発生する。

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「日本再生の国際交渉術」

著者

渡邊頼純(わたなべ・よりずみ)

慶應義塾大学総合政策学部教授

上智大学文学部哲学科卒業、同大学院国際関係論専攻博士課程修了、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部、GATT事務局、外務省経済局参事官などを経て現職。

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