2024年12月23日(月)

日本再生の国際交渉術

2012年8月7日

 今日本の通商交渉能力が大きく問われている。日本はより包括的なものを目指すとの観点から、自由貿易協定(FTA)を「経済連携協定」(EPA)と呼んでいるが、2002年11月に発効した日シンガポールEPAを皮切りに我が国はこれまで13件のEPAを発効させてきた。

日本の貿易全体に占める
EPA対象国の比率はまだ17%

 日本のEPAはASEAN諸国をほぼカバーし、ラテンアメリカ諸国ともメキシコ、チリ、ペルーと締結、加えてスイスとの協定も発効させている。それでも日本の対外貿易全体に占めるEPA対象国との貿易の比率は約17%に留まっており、韓国のFTA貿易の比率が60%超であることを考えると、日本のEPA戦略もまだこれからという感を否めない。

 これまで締結したEPAを「第一次世代EPA」を呼ぶとすれば、これからのEPAは「第二世代EPA」という位置付けになる。その中には、中国、アメリカ、EUといった日本にとって最も重要な貿易相手国が含まれる。より具体的には、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)、日中韓EPA、日EUEPAの「三点セット」が向こう10年間の通商政策優先項目となることは必至である。

FTAの「玉突きゲーム」

 この通商政策「三点セット」は一見個々バラバラに見えるかもしれないが、実は互いに関連し、連動している。その繋がり具合はビリヤードに例えることが出来るかもしれない。

 FTAやEPAは域内優遇のシステムであるから、域外に対しては優遇が及ばず、その意味ではアウトサイダーには差別的にならざるを得ない。その点がWTO(世界貿易機関)と根本的に異なる点である。

 WTOでは最恵国待遇原則があり、貿易上の待遇は関税率をはじめ全ての加盟国に対し同等で、無差別でなくてはならない。FTAやEPAは構成国の間だけで適用される「特恵的取り決め」であり、構成国以外には関税撤廃などの特典は適用されないため、競争上の「劣後状況」が発生する。そのような競争上の不利を挽回するためにまた新たなFTAを形成するインセンティブが生じる。こうしてFTAが次々と生じるFTAの「ドミノ現象」が発生する。


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