2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年12月23日

 2024年12月9日付の朝鮮日報社説は、尹錫悦が被疑者と呼ばれていること自体が恥ずべき悲劇的状況であり、早期の秩序ある移行の必要性を指摘している。

韓国の尹錫悦大統領の辞任を求める国民たち(AP/アフロ)

 尹錫悦に対する弾劾訴追案は、与党・国民の力が採決に参加しなかったため一度廃案となったが、大統領の今後を巡る状況は一層緊迫してきている。12月8日、大統領による12月3日の非常戒厳令を捜査中の検察非常戒厳特別捜査本部長(朴世鉉)は、大統領を内乱容疑の被疑者として立件し、捜査中であることを明らかにした。彼は今回の戒厳令は「公務員が職権を乱用し、憲法上の秩序紊乱の目的で暴動を起こしたもの」と述べた。

 緊張に拍車を掛けるように、警察は検察との合同調査を拒んでいる。このことは、警察が容疑の単独捜査に自信を持っていることを示すものと解釈されている。

 他方、高位公職者犯罪捜査処(CIO、公捜処)は検察と警察に対しこの事件を公捜処に担当させるよう要請した。憲法により、現職大統領は国家反逆罪を除き刑事訴追されない。

 尹錫悦は弾劾採決直前に行った対国民談話で「私の任期を含め、今後の政局安定策は与党・国民の力に一任する」と述べた。しかし、早期退陣の意向は明確にしなかった。このように重大問題を与党に一任することは責任ある態度ではなく、それは大統領が現在の深刻かつ緊迫する状況を十分に理解していないのではないかと懸念される。

 韓東勲(与党・国民の力代表)と韓悳洙(首相)は、「大統領の秩序ある早期退陣」を進める考えは示したが、今後の実効的な計画やその内容については明確にしなかった。首相と政党代表が、如何に合法的に、現職大統領が自らの職を維持した状態で「責任ある首相制」により国政を運営できるのか、議論が高まっている。

 国民の力はすでに内紛で麻痺し、弾劾に係る不一致で分裂は一層深まっている。韓東勲(党代表)は「大統領の職務停止の必要性」を強調したが、党としては弾劾反対との立場を維持した。積極的に弾劾に反対しないで投票不参加をするのは、自分達の論拠への自信の欠如を反映している。


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