2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年12月23日

 2016年の朴槿恵(大統領)弾劾は、政治的混乱はあったが、政治プロセスの予見可能性があったことにより、経済や外交への大きなダメージは回避できた。国会での弾劾採決、憲法裁判所の決定、更に大統領選挙というタイムラインは明確だった。それに比し、現状は完全に不明確であり、明日何が起こるか全く予測がつかない。

 与党が弾劾による「深刻な分裂は避けたい」ということであれば、「秩序ある移行」の具体的な方法と時間割を早く国民に提示すべきだ。大統領と与党にとり多くの時間はない。野党・共に民主党も責任ある立場を採り、この危機を乗り切るために協力すべきだ。

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先の見えない韓国政治

 12月12日午前、尹錫悦は国民向け談話を発表し、野党を「弾劾乱発で国政を麻痺」と非難し、「大統領の非常戒厳を宣言する権利の行使は司法審査の対象にならない統治行為だ」、「弾劾でも捜査でも堂々と立ち向かう」旨述べた。

 韓国の今回の危機は、尹錫悦の「非常戒厳を宣言」(12月3日夜)、国会による戒厳解除要求決議案の可決(12月4日未明)、尹錫悦による戒厳解除(12月4日早朝)、尹錫悦による謝罪し政局安定案は与党に一任し国政運営は党と政府が責任を持つとの談話(12月7日)、国会による弾劾案廃案決定(12月7日夜)と展開してきた。

 しかし、所謂「秩序ある移行」と国政の総理・与党代表への委任による体制も漂流し、危機を乗り切る政府の確立は一向に見えず、合法的な国権を誰が有効に維持しているのかも不明確な状態が続いている。法的、行政的に無政府に近い状態になっていると言っても過言でない。韓国のデモクラシーは今大きな危機に直面している。安全保障のリスクもある。

 非常戒厳宣言は間違った判断だったと思うが、早く尹錫悦の辞任か弾劾かの選択をして、憲政上の規定に沿う状態に戻るべきだ。12月7日の談話の考え方は憲政上明確な根拠がなく、曖昧だ。かかる中で、国会の総理等への聴聞や捜査が先行するのはリスクになる。

 与党は、「2月退陣・4月大統領選」、または「3月退陣・5月大統領選」との案で大統領を説得しようとしたが議論が難航しているようだ。尹錫悦は辞任に反対して弾劾を望んでいるとの報道もある。


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