5月13日北京の人民大会堂で会談した日中韓の首脳は3カ国間の自由貿易協定(FTA)について交渉を年内に開始することで合意した。この「年内交渉開始」という合意をどう評価すべきなのだろうか。
報道では、日本は即時開始を望んだが、国内に依然として強いFTAアレルギーが残る韓国がこれに抵抗、結局このような合意に落ち着いたと解説している。しかし、その韓国は既に5月2日には中韓の2カ国間でFTA交渉を始めることで中国と合意している。どうやら韓国も中国も日本が入った3カ国FTAよりも中韓FTAを優先する構えと見るのがより自然な見方の様である。
合意に至るまで実質12年超?
思えば日中韓はここまで来るのもたいへん徒労の多い、長い長い道のりであった。2011年5月の日中韓首脳会議で産官学の共同研究会の作業を同年中に終了させることで合意し、同研究会は2011年12月26日に報告書を取りまとめた。この共同研究会は2010年5月から開始されており、1年半かけて「研究」したことになる。日本のEPAでは多くの場合にこの産官学共同研究会が政府間交渉に先駆けて行われるが、通常は1年以内にその検討作業を終えることになっているので、日中韓の共同研究はそれより5割増しの時間を要したということになる。
しかし、実際にはもっと長い時間がかかっている。なぜなら日中韓のFTAについては1999年10月からいわゆる「民間レベル」の共同研究がスタートしていたからである。日本の総合研究開発機構(NIRA)、中国の国務院発展研究中心(DRC)、韓国の対外経済政策研究院(KIEP)の3研究機構がこの研究に従事してきた。こう考えると実に12年超の長い時間「研究に研究を重ねた」成果として今回の合意があると考えるべきかもしれない。
日中韓が抱える複雑な政治・経済問題
では、なぜこのように長い時間を要したのだろうか? そこにやはり日中韓の間に横たわる国際政治上の困難な課題と、3カ国間で展開する国際経済上の「競争」と「協調」の複雑な連立方程式があると言わざるを得ない。
前者については、歴史問題や教科書問題など過去のレガシー(遺産)に関わる問題から領土問題まで多岐にわたるイッシュ―(論点)がFTA交渉への糸口をつかもうとする3カ国の交渉当局者の前に立ちはだかった。