2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年1月11日

 1)中国に対し、米国人ジャーナリストへのビザ供与を相互主義にするよう要求すること。米国では、中国人ジャーナリストが数百人の単位で仕事をしているが、中国における米国人ジャーナリストの数は大きく制限されている。

 2)米国政府内で世論外交を担当している者は比較的少ない。これを増員する必要がある。

 3)米の軍関係者のうち、世論外交に携わる者をより多く訓練する必要がある。

 と、述べています。

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 上記、D.チェンの論文は、中国の宣伝工作(世論戦)に対抗して、米国はより多くの努力をしなければならない、と論じたものですが、そのことは日本の場合にそのままあてはまることで、傾聴に値する点が多々あります。日本としては、中国の世論戦に対し、予算措置を含め、制度上の種々の措置を講ずる必要があるでしょう。

 特に、日本にとっての中国の宣伝工作の矛先が、歴史、それも「戦争」に向けられていることを、十分認識して対応する必要があります。例えば、尖閣領有権についての中国の70年代以来の主張は、「古代以来中国のもの」という漠然とした言い方が普通でしたが、昨年夏以降の中国の主張は、それが「日清戦争」という戦争の結果「盗取したもの」という解釈を明瞭に打ち出すようになりました。これはまさに、世論戦であり、心理戦であり、法律戦でもあります。

 戦争に結びついた主張は、中国国民に訴えやすいこと(「日本は昔、中国に悪いことをした」という主張に容易に結び付く)、それと同時に、第二次世界大戦での「反ファシズム戦争の勝利」という図式を強調することにより、米国人の間に第二次大戦中の連帯意識を思い起こさせる効果を狙ったものと考えられます。

 このような観点から考えれば、米上院が11月末、国防権限法に「尖閣は安保条約の適用範囲」と明記することを決定したことは、日本として歓迎すべきことであります。なお、米国政府は、1990年代以降「尖閣が日米安保条約の適用範囲」であることを、折に触れて公言するようになりましたが、1980年代初めは、「双方の話し合いによって平和裏に解決してほしい」との中立的立場を変えなかったことを想いだすと、今回の米議会の動きは、特別重要な意味を持ちます。

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