「モノ言う新聞」として人気の高い中国広東省の週刊紙「南方週末」の新年特別号が改ざんされた事件は、同紙を改革・憲政・民主・自由の「象徴」として「団結」を強めた記者、研究者、弁護士ら知識人と、これを許せば共産党一党体制が緩むと危惧した共産党との全面対決となった。約1週間に及ぶ攻防は10日、南方週末が正常に発行され収束したが、この事件に「深い意義」を見出だした知識人は多かった。北京の民主派作家は「記者が犠牲を払い、権利を訴えたことで、全国のあらゆるメディア管轄当局者が権力を勝手に行使してはいけないという教訓を得たはずだ」と解説した。
スクープ紙への監視
南方週末の記者たちの我慢は限界に達していた。同紙のある記者は、もともと共産党宣伝部の主管する党紙の記者だったが、南方週末に移って来た。「なんでうちの新聞では他紙が書けることも書けないんだ」。こう不満を感じていたが、南方週末に移ったら違う圧力が存在した。
南方週末や南方都市報など都市報は、改革・開放が深化した1990年代後半以降、広東省広州、北京、上海などに本格的に登場したが、「共産党の喉舌(代弁者)」として宣伝やプロパガンダが主な役割だった新聞界に新たな波をもたらした。都市報は急速な市場経済化が進む中、「売れる新聞」を目指していた。南方週末などの若手記者は、権力の裏で何が起こっているか党機関紙が書かない調査報道や独自記事を追求した。その結果、党と社会の安定を求める共産党宣伝部は、これらスクープ紙への監視や管理を強めた。
南方週末選んだオバマ大統領
有名なのは、南方週末が2009年11月に訪中したオバマ米大統領と単独会見した事件だ。オバマ大統領が中国の民衆にメッセージ伝えるため、中国メディアとのインタビューを考えたが、選んだのは人民日報や国営新華社通信、中央テレビなど伝統メディアでなく、民主や自由などを追求し、民衆に向けて真の中国を発信する南方週末だった。
オバマ大統領は取材の際、同紙編集長に「南方週末と読者の皆さんへ」との直筆メッセージを託し、「見識を持つ民衆は、健全な政府にとって重要であり、報道の自由は、見識ある民衆を育てるのに貢献する」と記した。