NHK 3.11シリーズ「メルトダウン」
原発事故に冷静に迫る
「実験ジャーナリズム」の成果


田部康喜 (たべ・こうき)  東日本国際大学客員教授

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

田部康喜のTV読本

月刊WEDGEに2008年6月号まで約10年間、110回にわたって連載したコラム「読むテレビ」が、インフィニティで復活します。 コラムを読んでくださった方が、そのテレビ番組を見なくても番組について語れるようになる、というコンセプトは変わりません。大きな転換期にさしかかっているテレビ界。スマートフォンやスマートパッドの登場によって、映像コンテンツの価値はより高まっていると思います。ぜひご覧いただきたい番組をご紹介してまいります。掲載回数は月に2回で、第1・第3水曜日にアップ予定です。

»最新記事一覧へ

3月11日の前日の夜明け前、福島県いわき市の新舞子浜に1000人以上の老若男女と浜辺の防波堤に並んで、海に向かって鎮魂の祈りを捧げた。ジャーナリストの下村満子さんが県内で主宰する私塾と中小企業の経営者の組織が、震災後1周年の昨年から始めた催しである。東京や浜松など県外からの参加者もいた。

 いわき市は地震と巨大津波に襲われ、さらに北にある町村が福島第1原発の事故の被害が直撃した地域である。

 「福島を忘れない 祈りの集い」の集会はその前夜、避難者や遺体の捜索にあった警察、消防団の体験談の報告などがあった。認知症の老人施設の女性経営者が、原発事故後の行政の混乱のなかで、富岡町から川内村、川俣町、福島市と、彷徨するように避難した様子が淡々と語られる。

 「福島は忘れられようとしているのではないか」という地元の人々の心配の声が、催しを毎年やろうという後押しになった。

 反原発や脱原発の演説があったわけではない。祈りの当日もそうであった。

 事実を事実として語らしめよう、というジャーナリズムの原点にこだわってきた下村さんらしい運営の方針である。

事実を掘り起こし、シュミレーションを行う

 3月10日に放送されたNHKスペシャルの3.11のシリーズである「メルトダウン」もまた、福島を忘れないジャーナリストたちによる「調査報道」である。福島第1原発の事故の原因が、政府や東京電力、国会事故調査委員会などによってもいまだにはっきりとしないなかで、調査の意欲が衰えてしまうことに、取材チームが危機感を抱いていることが繰り返し、進行役の報道局員によって伝えられる。

 ジャーナリズムはまず、読者や視聴者に判断の材料を提供することにある。事実を掘り起こすことと、それに対する評価は厳格に区別しなければならない。  

1
nextpage
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
「田部康喜のTV読本」

著者

田部康喜(たべ・こうき)

東日本国際大学客員教授

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

WEDGE Infinity S
ウェッジからのご案内

Wedge、ひととき、書籍のご案内はこちらからどうぞ。

  • WEDGE
  • ひととき
  • ウェッジの書籍