尖閣めぐり重要性高まる台湾
カギ握る漁業交渉

WEDGE4月号フリー記事


小笠原欣幸 (おがさわら・よしゆき)  東京外国語大学准教授

1981年一橋大学社会学部卒。同大学で修士号、博士号取得。94年東京外国語大学外国語学部助教授、2007年より現職。英国シェフィールド大、台湾国立政治大で客員研究員を務める。馬英九総統、呉敦義副総統をはじめ台湾の与野党政治家、学者・ブレーンの多くと面会。

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海、空、レーダー照射と、尖閣周辺で圧力を強め続ける中国。台湾も、馬英九総統が領有権を主張し、抗議船や漁船によるアピールをする。しかし、中国との対日共闘を拒否し、「平和イニシアチブ」を提起するなど、その姿勢は異なる。日中の緊張が続くなか、自由と民主の価値観を共有する日台間の協力は、東シナ海の安定に資する。目前の課題となる漁業交渉を契機に、対台湾政策の強化を。

 尖閣諸島問題で日中関係が緊張する中、台湾の戦略的重要性が高まっている。中国は早くから台湾に対し領土問題での対日共闘を呼びかけているが、台湾の馬英九政権は尖閣諸島の領有権を主張しつつも、「尖閣諸島問題で中国と連携しない」と表明している。日本は大きな外交戦略の中で対台湾政策を展開していく必要がある。

 近年日台関係は非常に良好だが、尖閣諸島問題およびそれに関係する漁業問題は日台間の大きなトゲとなっている。日本政府による尖閣国有化後、台湾内部でも反発が起こり、昨年9月25日に多数の台湾漁船と巡視船が尖閣海域に入り海上デモを行なう事態を招いた。台湾の動きは、「台湾は親日」と思っていた日本国民に大きなショックを与えた。日本政府は、同10月5日台湾へ日台関係の安定に向けた玄葉光一郎外相(当時)からのメッセージを発信し、台湾外交部もそれを評価するコメントを発表した。

 いま焦点は日台漁業交渉に移っている。漁業交渉は領土問題を議論するものではないが、漁業区域の線引きはまさに領海と関わる。交渉を進展させることができれば、尖閣問題に関する台湾側の実利上の不満が大きく解消される。台湾側は領土の主張を続けるだろうが、対日対抗意識はかなり軽減され、尖閣をめぐって中台が対日共闘するという日本にとって最悪の事態を防ぐことができる。

台湾と中国で異なる
尖閣をめぐる姿勢

 馬総統の尖閣領有権の主張は非常に強く、中国と変わらないくらい厳しい表現を用いている。また、馬政権は、以前は尖閣に向かう抗議船の出港を抑えていたが、日本政府の国有化の方針が明確になった昨年6月以降、出港を容認する方針に転じた。しかし、日本はそこにとらわれて大局を見失ってはならない。台湾は中国と異なり、威嚇や暴力で現状を変更しようとは考えていない。

 馬総統は昨年8月に「東シナ海平和イニシアチブ」を発表し、関係方面に「対立をエスカレートさせない」、「争いを棚上げし資源の共同開発を」と平和的解決を呼びかけた。同9月には「平和イニシアチブ」の推進綱領を発表し、対話のテーマとして、(1)漁業、(2)海底資源、(3)海洋環境、(4)海上安全、(5)行動準則の策定を示した。そして、台湾と日本、台湾と中国、日本と中国の3組の二国間対話から始めて、台日中の多国間対話へもっていく構想を提起した。

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著者

小笠原欣幸(おがさわら・よしゆき)

東京外国語大学准教授

1981年一橋大学社会学部卒。同大学で修士号、博士号取得。94年東京外国語大学外国語学部助教授、2007年より現職。英国シェフィールド大、台湾国立政治大で客員研究員を務める。馬英九総統、呉敦義副総統をはじめ台湾の与野党政治家、学者・ブレーンの多くと面会。

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