安保激変

2013年4月2日

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小谷哲男 (こたに・てつお)

日本国際問題研究所 主任研究員

1973年生まれ。同志社大学大学院法学研究科博士課程満期退学。ヴァンダービルト大学日米関係協力センター客員研究員、岡崎研究所特別研究員等を歴任。専門は日米同盟と海洋安全保障。法政大学非常勤講師及び平和・安全保障研究所・安全保障研究所研究委員を兼務。中公新書より海洋安全保障に関する処女作を出版準備中。

 4月1日には、世界中のメディアで嘘の情報が流される。昨年、世界の海洋安全保障関係者の間では、「財政難のイギリス政府が建造中の2隻のクイーン・エリザベス級空母を中国に売り渡し、中国がこれらを『毛沢東』及び「『鄧小平』と名づける」というものが流れた。

 しかし、多くの関係者はこれがエイプリルフールの嘘だと気づかず、本気でその影響について議論をしたのだった。実際、中国の海洋進出にともなって、国際的な慣習から逸脱した出来事が起こっているため、専門家の感覚も麻痺してしまっているのかもしれない。

中国の海洋進出は最近始まったわけではない

 日本政府による尖閣諸島の国有化以後、中国は中国の海洋監視船による日本の領海侵犯と中国機による領空への接近を常態化させている。尖閣周辺で中国の監視船が日本の漁船を追跡し、海上保安庁の巡視船が間に割り込んで漁船を保護するという事案も起こっている。

 このような状況では、いつ不測の事態が武力衝突につながってもおかしくない。他国が実効支配する海域に政府公船を送り込むというのは、平和的な国家が行うことではないのだ。さらに、人民解放軍艦船が海上自衛隊のヘリや護衛艦に対して火器管制レーダーを照射したが、これは国連憲章が禁ずる武力の威嚇に相当する。

 だが、このような中国の強引な海洋進出は、決して最近始まったわけではない。

 中国は、1950年代以降数次にわたって台湾海峡危機を引き起こしたし、南シナ海に目を向ければ文化大革命の時期を除いて常に海洋進出を強引に推し進め、周辺諸国との摩擦を引き起こしてきた。特に、中国はアメリカがアジアにおける軍事力を削減するとき、つまり力の真空を狙って海洋進出を推し進める傾向がある。たとえば、1970年代にアメリカがベトナムから撤退すると西沙諸島を占領し、1990年代にアメリカがフィリピンから基地を撤収すると南沙諸島のミスチーフ環礁をフィリピンから奪った。

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