2024年12月26日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年3月28日

 中国の全国人民代表大会(全人代=国会、会期3月5日~17日)で、習近平氏が国家主席、李克強氏が首相に選出され、「習-李体制」指導部が本格始動した。国際社会では「中国脅威論」が強まり、国内では貧富の格差や汚職の横行、大気汚染への国民の不満が根強い。内憂外患を抱えた多難の船出だ。

 習氏は全人代閉幕式の演説で、中華民族の偉大な復興という「中国の夢」の実現を目標に掲げ、愛国主義の発揚を呼び掛けた。国家元首として人心を掌握したいとの意思がみてとれるが、ニューリーダーの権力基盤はまだ脆弱だ。

 対外的には「平和的発展を目指す」と脅威論の払拭に努める一方で、「国家の主権、安全、発展の利益」を断固守り抜くと述べ、強靱さもアピールした。日中関係は尖閣問題で著しく悪化したままだが、習指導部が態度を軟化させる兆しは見えない。

5.5日に1回のシャドウボクシング

 昨年9月に日本が尖閣諸島を国有化して以来、中国の公船の領海(沿岸から12カイリ以内)への侵入は3月18日までに34回に上った。5.5日に1回の割合だ。領海の外側の接続水域(同24カイリから12カイリ)に入った回数はさらに多い。

 中国は5.5日に1回領海に入るという強引な“共同管理”で、日本の実効支配にゆさぶりをかけ続けている。領海侵入は13日間の全人代会期中にも2回、閉幕直後に1回起きた。これは習指導部が尖閣問題について、胡錦濤前指導部の強硬方針を継承することを行動によって明確化にしたことを意味する。

 全人代の報道官、傅瑩外務次官(女性)は記者会見で、「日本が国有化によって(領有権争いの棚上げという)合意に背いたのだから、中国の監視船が尖閣海域を巡航するのは当然だ」と言い切った。

海の「五竜」を統合
海洋局は格上げ

 全人代では、海洋権益を守る役割を担う国家海洋局の権限を大幅に強化する政府機構改革案も可決された。改革案によれば、国家海洋局の下に「中国海警局」を新設し、尖閣警備の主力だった国家海洋局の「海監」総隊に(1)公安省の海上警備部隊(2)農業省の漁業監視部隊(3)税関総署の密輸取締部隊--の3部隊を統合し、パトロール機能を強化する。


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