安保激変

2013年4月9日

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小谷哲男 (こたに・てつお)

日本国際問題研究所 主任研究員

1973年生まれ。同志社大学大学院法学研究科博士課程満期退学。ヴァンダービルト大学日米関係協力センター客員研究員、岡崎研究所特別研究員等を歴任。専門は日米同盟と海洋安全保障。法政大学非常勤講師及び平和・安全保障研究所・安全保障研究所研究委員を兼務。中公新書より海洋安全保障に関する処女作を出版準備中。

 北朝鮮による核の恫喝が続いている。

 昨年12月に長距離弾道ミサイルの発射実験に成功し、今年2月には3度目の核実験を行った。国連安全保障理事会による制裁決議をあざ笑うかのように、核戦力の増強や原子炉の運転再開を表明している。さらには、朝鮮戦争休戦協定の白紙化を宣言し、日米韓に対する核攻撃もほのめかしながら戦略ロケット部隊に射撃待機命令を出している。経験不足の若い指導者が、国内で権力を確立するために核兵器という「危ないおもちゃ」をもてあそんでいるのだろうか。

北朝鮮の意図を正確に知る術なし
専門家の見解も割れる

 北朝鮮によるここ数週間の挑発的言動について、各国の専門家の間では見解が割れている。

 毎年3月には米韓両軍の大規模な年次演習が行われ、北朝鮮がこれを「挑発」だと強く非難することが恒例となっている。今年も米韓年次演習にタイミングを合わせて北朝鮮の挑発的言動が強まっているため、北朝鮮は挑発をエスカレートさせながらアメリカの出方を伺っているが、決して戦争につながる一線は越えない、というのが大方の見方だ。しかし、北朝鮮が事実上の核保有国となったため、北朝鮮の挑発により不測の事態が起こる可能性が高まり、小規模な武力衝突が核戦争に拡大する可能性があるという見方も広がっている。

 北朝鮮に関する最大の問題は、われわれには北朝鮮側の意図を正確に知る方法がないことだ。北朝鮮の政策決定はブラックボックスに包まれており、できることは北朝鮮の意図を推測することだけだ。それでも、北朝鮮が「弱者の恫喝」を行っていることだけは間違いない。

フセインの二の舞を何よりも恐れる

 北朝鮮指導部の最優先課題は体制の生き残りである。これまでも、対外的な挑発を続けることによってアメリカを交渉の場につかせ、体制の安全を取り付けることを目指してきた。

 北朝鮮が1950年代にミサイル開発に乗り出したのは、朝鮮戦争でアメリカ軍の後方基地となった日本を攻撃できる能力を持ち、朝鮮半島の統一を目指すためだった。しかし、93年に核開発に乗り出したのは、湾岸戦争でアメリカの圧倒的な軍事力を目の当たりにしたため、金日成体制の存続のために核開発を外交カードとして使うようになった。北朝鮮の指導者は、イラク戦争で捕らえられたサダム・フセインの二の舞になることを何よりも恐れているはずだ。

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