「人生100年時代」と言われて久しい中、「いくつになっても働きたい」と考える人にとって起業は一つの選択肢となっている。これまでの仕事や人生経験を生かしたビジネスは、新たな価値を生み出すかもしれないが、広く周知させることは難しい。その主要なツールと最近なっているのがSNSだ。
ただ、どう使えば良いのか、簡単なように見えて難しい。SNSとは遠い存在とも言えるシニア起業家たちはいかに悩み、どう発信しようとしているのか。SNS運用やマーケティングで年商1億円を稼ぐ平成生まれの〝起業の先輩〟から学ぶ現場を取材した。
本音は「何をやったらいいかわからない」
ものづくりに長年従事し、自らが培ってきた技術とひらめきを商品化しようと、今年4月にアイデア文房具の開発・販売会社を創業した81歳の小野實さんは悩んでいた。
「会社のホームページを作ったのは良いが、誰も見てくれない」
小野さんはA4用紙10枚ほどしか収納できない市販のクリアファイルを60~70枚収納可能にし、綴じ具に一切触れることなしにバインダーにファイルを収められる書類管理アイテム「pupuシステム」を開発。HP上を中心に販売している。
「ペーパーレスの時代」と言われつつも、いまだ紙を利用する仕事もあり、膨大な量を管理するための利便性を高めようとしたものだ。紙を嗜好する人にとっても「痒い所に手が届く」商品であるとも言える。一定の層には需要もありそうだ。
商品の魅力をホームページで解説、使用方法を動画でも説明しているが、注文が増えることはない。「SNSなら流行らせることができるかもしれないが、SNSはアプリをインストールしたものの、何をやれていない」と声を落とす。
「一歩目が軽いのはTwitter(ツイッター)。商品の便利さを見せるだけでも広がる可能性がある」。こうアドバイスしたのは、SNS運用代行や企画マーケティングの会社を経営する上村志津瑠(かみむら・しづる)社長だ。
1992年の平成生まれで、20代半ばで「あいめこ」の名称でツイッターを始め、試行錯誤と独学によりSNS上で収入を得ていき、今やSNSの会社を2社経営する。新型コロナウイルス禍では、日本で初めて「オンラインキャバクラ」をオープンし、注目を浴びた。自らの半生とSNSビジネスのノウハウを伝えた『パソコンも持ってなかった私がTwitterで年商1億円稼ぐ理由。』(主婦と生活社)が話題を呼んでいる。