チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年5月14日

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三宅康之 (みやけ・やすゆき)

関西学院大学教授

1969年生まれ。京都大学博士(法学)。専攻は現代中国政治外交。著書に大平正芳記念賞を受賞した『中国・改革開放の政治経済学』(ミネルヴァ書房、2006年)などがある。

 今年3月に第12期全国人民代表大会第1回会議が開催され、胡錦濤中国共産党総書記・温家宝首相から習近平総書記・李克強首相への政権交代が完了した。10年ぶりに新政権が発足したことで、その一挙手一投足に内外の注目が集まっている。

 ここでは、新首相の李克強氏の看板政策「都市化(城鎮化)政策」について取り上げてみたい。そもそも、なぜ、いまさら都市化なのだろうか。われわれが普段中国報道などで見かける画像や映像は、北京や上海といった、中国を代表する大都市の情景であり、そこには林立する高層ビルやおびただしい数の車が行き交う高速道路網が映り込んでいる。ここからまだどうやって都市化するのか、する必要があるのか、不思議に思う向きもあるかもしれない。

 また、中国の統計によると、2011年末、都市部人口が6億9079万人、農村部人口が6億5656万人となり、都市部人口が初めて農村部人口を上回ったとされる。現在毎年1000万人が都市に移住しており、2億6000万の出稼ぎ労働者が都市で居住しているというデータを見聞きされた方もいるだろう。わざわざ政策的に推進しなくとも都市化は着実に進んでいるようにも見える。実際、中国国内でもすでに疑問視する声が上がっており、3月17日の最初の記者会見でもそうした疑問を新華社記者が直接ぶつけたことは、本サイトにも寄稿されている石平氏が『産經新聞』に寄稿されているコラム「【石平のChina Watch】」で詳しく紹介されているのでそちらを参照されたい。

*『産經新聞』3月28日掲載「出足からつまずいた李首相」

李首相が長年にわたり温めてきたテーマ
「都市化政策」

 新首相は国務院常務副首相であった昨年も、「都市化は内需拡大の最大の潜在力である」、「中国の将来の最大の潜在力は都市化にある」などと各所で繰り返し言及していた。こうした発言を見ると、昨今、中国経済が最大市場の欧米の不景気や国内賃金上昇などで従来の発展パターンが行き詰まってきていることへの処方箋として打ち出してきたような感もする。だが、実は李首相は国務院入りする前に河南省や遼寧省などの地方で都市化にすでに取り組んできた。中国の雑誌『瞭望東方週刊』記事の紹介によると、中国共産党青年団中央書記処に勤務のかたわら学んだ北京大学経済学大学院に提出した修士論文「農村工業化:構造転換中の選択」のなかでも都市化について取り上げていたとのことである。80年代末から90年代初頭にかけてのことになる。いずれにせよ、都市化政策は李首相が長年にわたり温めてきたテーマであったと言え、それだけに「本気度」も高いと考えられる。

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