中島厚志が読み解く「激動の経済」

2013年5月27日

»著者プロフィール
著者
閉じる

中島厚志 (なかじま・あつし)

経済産業研究所理事長

1952年生まれ。東京都出身。東大法学部卒業後、75年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。パリ興銀社長、日本興業銀行調査部長、みずほ総合研究所専務執行役員チーフエコノミストなどを経て現職。著書に『統計で読み解く日本経済 最強の成長戦略』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『日本の突破口―経済停滞の原因は国民意識にあり』『世界経済連鎖する危機―「金融危機」「世界同時不況」の行方を読む』(東洋経済新報社)など。

 市場がアベノミクスを消化しきれずにいることを示すかのように、足元為替や株価が乱高下している。国債市場も例外ではない。国債金利も一時1%まで上昇するなど乱高下している。

 国債金利の急上昇の背景には、2%の物価目標達成を目指す日銀の金融緩和政策がある。日銀の景気浮揚のための金融緩和策が、市場ではインフレ期待を高まらせ、長期金利の上昇につながっている。

 景気浮揚を図ろうとする金融緩和策が、逆に景気を下押ししてはたまらない。とりわけ、財政赤字が深刻な日本では、一層の財政逼迫に直結しかねない。望ましいのは、リーマンショック後の米国のように、大胆な金融緩和策が低金利をもたらす状況だ。

 しかも、米国では最近財政赤字までもが急速に縮小している。昨年末懸念された「財政の崖」の回避策がギリギリまでまとまらず、今年に入ってもなかなか財政健全化の中身や今年度予算が決まらなかった議会の対応振りから見れば見違えるような展開だ。

 米国で財政健全化が急速に進みだしているのを見ることは、足元国債金利が乱高下している日本にとって大いに参考となる。そこで今回は、日本ほどではないにしても深刻な財政赤字に悩む米国で、なぜ財政健全化が進みだしているのかを見てみたい。

米国の収支改善の主因は何か

図表1 米国:連邦予算収支状況
(前年10月~当年4月)
拡大画像表示

 5月に入って、米国議会予算局(CBO)は2013会計年度(12/10-13/9)の4月までの財政赤字が12年度同期比で大幅に減ったと発表した(図表1)。その上で、米国の2013年度財政赤字はGDP比で▲4.0%となり、2012年度の▲7.0%から大幅に改善するとの見通しを示した(図表2)。

 また、CBOは、今後10年間の財政収支推計もあわせて公表している。そこでは、2012年度にGDP比▲7.0%だった財政赤字が、今後10年間▲2.1~▲3.6%程度で推移すると試算している。

 米国の財政収支が改善に向かっている背景には景気回復がある。景気の回復で企業業績が改善し、賃金上昇もあって法人税収、所得税収とも増加している。一方、失業給付は減少している。

図表2 米国:財政収支と対名目GDP比の推移
拡大画像表示

 リーマンショック後不振が続いてきた住宅市場の回復も大きい。政府系住宅金融公庫であるファニーメイ(FNMA)とフレディマック(FHLMC)の収支が改善し、国庫納付が増えたことも財政収支改善に寄与している。

 しかし、財政赤字縮小の要因は景気と住宅市場の回復だけではない。むしろ、主因は所得税増税等の財政健全化の取り組みが奏功していることにある。CBOでは、今後2年間の収入増の半分は増税によるものとしている。実際、今年1月から、高所得者に対する所得税増税、キャピタルゲイン課税等の引き上げ、給与税減税の終了、医療保険改革による増税などが実施され、歳入増に寄与している。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る