2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2013年5月29日

成年後見人が付くと選挙権を自動的に失うとした公職選挙法が改正され(改正案が5月27日に参議院を通過し成立)、今夏の参院選から適用されることとなった。知的・精神障害者や認知症の人を中心に、2012年末時点で約13万6400人にも上る人々が、一律に選挙権を回復し、投票できることとなった。
法改正のきっかけは、ある障害者が国を相手取って起こした選挙権回復訴訟で、今年3月に東京地裁が違憲判決を下したこと。弁護団を務めた、國學院大学教授の佐藤彰一弁護士に聞いた。

――与党が違憲判決後、約2カ月間で公選法改正をまとめたわけですが、この間の政治の動きをどう見ていましたか。

佐藤:信じられないくらいテンポの早い改正でした。背景には、誰の目から見てもあまりに「自明」だったということがあると思います。メディアも一致して違憲判決を支持しましたし。政治としても動かざるを得なかったのでしょう。

――とはいえ、国側は東京地裁の違憲判決に対し、控訴していますよね。

佐藤彰一弁護士

佐藤:法学者で、国の主張に合理性があるという人はいませんでした。こういう、国を相手取った民事裁判では、国側の代理人は訴務検事、つまり検事や裁判官を経験した法務省の役人が務めるんですが、これが毎回のように交代したんです。国側も相当苦しかったんだと思いますよ。

 この案件は、裁判をテコにして、それまで合憲だったものが違憲にガラッと覆ったのではなく、誰が見てももともと違憲でおかしかったことに裁判を契機として人々の関心が向いたという話なんです。

――そんな「自明」のことが、なぜ長らく放置されてきたのでしょうか。過去の新聞記事を調べると、20年も前から法制審議会で、選挙権などを一律に剥奪するのは人権上問題だという論点が出されています。「自明」であれば、20年もかかるのはおかしいと思うのですが。

佐藤:成年後見制度は2000年に開始しました。それまでは禁治産制度でした。明治以来のこの制度では、心神喪失状態の人に裁判所が禁治産と宣告すると、さまざまな法律行為が制限されました。選挙権含め、約150にも上る「欠格条項」がありました。「ただし禁治産者を除く」というような条文がさまざまな法律に書き込まれていたのです。


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