WEDGE REPORT

仮想敵は日本 韓国軍が狂わせる日米韓の歯車

勝股秀通 (かつまた・ひでみち)  日本大学総合科学研究所教授

1983年に読売新聞社入社。93年から防衛省・自衛隊を取材。民間人で初めて防衛大学校総合安全保障研究科(修士課程)を修了。解説部長兼編集委員等を経て現職。著書は『自衛隊、動く』(ウェッジ)等。

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ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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 ミリタリー同士の良好な関係による「安全装置」が壊れ始めていることは、昨年12月に公表された韓国の『2012年版国防白書』が裏付けている。ある自衛隊幹部は「目を疑いたくなるような内容だった」と評している。

 韓国が独島と呼ぶ竹島をめぐっては、日韓両国とも領有権を主張しているが、白書には、韓国海軍のイージス艦「世宗大王」を先頭に、艦隊による島の警備活動の模様が大きな写真で強調されていた。前回の『10年版国防白書』では、わずか1枚ずつだった竹島の写真と領有を示す地図が、今回は計4枚も掲載されている。

 日本との防衛交流や防衛協力に関する記述では、「独島は疑いもなく、地理的にも歴史的にも、そして国際法的にも韓国の領土である」と明記した上で、「日韓の将来の防衛交流や協力を発展させるためには、独島に対する日本の誤った認識や不当な主張を打破しなければならない」とまで記述している。

 腹立たしい限りだが、今必要なことは、居丈高な韓国の振る舞いに対し、感情的になって憤ることではなく、冷静な視点で、自衛隊と韓国軍との連携が、韓国の平和と安全にとって何よりも重要であるということを指摘し、韓国軍、そして青瓦台の目を覚まさせることだ。

韓国防衛支える自衛隊

 沖縄・尖閣諸島の領有権をめぐる日中対立が激化し、今でこそ、日米同盟や在日米軍が存在する意義は、中国に対する抑止力を維持することのように思われがちだが、戦後一貫して、その主目的は朝鮮半島有事への備えである。自衛隊や在日米軍の体制は、安保条約に基づく日米同盟という枠組みの中で、米国の同盟国である韓国を防衛するために、強力な半島有事シフトを維持している。

 具体的には、航空自衛隊は福岡県の築城と芦屋、山口県の防府北の3カ所に、1500~2000メートル級の滑走路を保有しており、海上自衛隊の大村(長崎)、陸上自衛隊の目達原(佐賀)、高遊原(熊本)、在日米空軍が使う板付基地(福岡空港)とあわせれば、北部九州という極めて限定されたエリアに7カ所もの航空基地が点在している。これは万一、第2次朝鮮戦争が発生すれば、米軍の戦闘機や輸送機が発進する拠点として活用されるのはもとより、日本人や米国人だけでなく、韓国から避難してくる多くの民間人の受け入れ基地としても活用されるはずだ。

 さらに、北部九州地区には、福岡病院、大分・別府病院、長崎・佐世保病院、熊本病院という4つの自衛隊病院が集中している。これも韓国防衛のために傷ついた米軍や多国籍軍の兵士らの治療を前提に整備、維持されてきたのは紛れもない事実だ。このほか、朝鮮半島と向き合う長崎県の佐世保基地は、米海軍第7艦隊の戦略拠点であり、広大な佐世保湾の大半は、半島有事に緊急展開する米軍が占有したままだ。

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著者

勝股秀通(かつまた・ひでみち)

日本大学総合科学研究所教授

1983年に読売新聞社入社。93年から防衛省・自衛隊を取材。民間人で初めて防衛大学校総合安全保障研究科(修士課程)を修了。解説部長兼編集委員等を経て現職。著書は『自衛隊、動く』(ウェッジ)等。

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