不可解なのはそれだけではない。1つは佐世保の西方約200キロに位置する済州島に大規模な海軍基地を建設していることだ。数年以内には、P3Cの航空基地も併設され、大型揚陸艦も含め、韓国海軍は機動部隊を配備する計画を打ち出す。防衛省幹部は「済州島は日本海と東シナ海をにらんだ前線拠点であり、将来、中国海軍が寄港するようになるとやっかいだ」と打ち明ける。
また、これまで韓国は、米国との取り決めで弾道ミサイルの射程を300キロに制限してきたが、昨年10月、これを800キロに延長した。韓国南端から北朝鮮北端までの距離と説明するが、大阪など西日本は完全に射程圏内に入る。弾道ミサイルの射程延長に併せ、韓国は陸上発射型の巡航ミサイル(射程1500キロ)を配備し、駆逐艦や潜水艦には射程400キロの巡航ミサイルを搭載していることを公表した。北朝鮮を攻撃するためとしているが、「仮想敵は日本だ」とみる自衛官は少なくない。
日米同盟と米韓同盟。日韓は互いに米国を介して朝鮮半島の安定に力を注いできた。在日米軍やその基地施設をめぐって国内が二分することがあっても、日本は戦後、多くの資材と資金を投入し、半島有事シフトを維持してきた。しかし、韓国には日本の努力への理解が乏しく、日本も自らが果たしてきた役割の重要性を認識していない。
その間隙を突くように今、北朝鮮は核とミサイル開発を推し進め、中国は韓国を取り込みながら海洋進出を活発化させ、米国を基軸とする同盟に揺さぶりをかけている。何のために、日本と韓国は米国と同盟を組み、互いの同盟を基盤にしながら連携と信頼を築き上げてきたのか。その原点を見失ったとき、この地域の平和と安定は崩壊するだろう。
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