「南シナ海は我が領海」
“侵犯”続ける中国に打つ手探るフィリピン


ハーマン・クラフト (Herman Joseph S. Kraft)  フィリピン大学ディリマン校政治学部准教授

1993年以降、東南アジアおよびアジア太平洋地域全般の安全保障に関する非公式対話メカニズムに関与し、現在、フィリピン政治学会(PPSA)会長も務める。専門は、国際安全保障と比較政治学(東南アジアの民主化と人権含む)。

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ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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南シナ海で強硬姿勢を強める中国の脅威に直面して難局に立たされるフィリピンは、日本と極めて似た状況にある。共通の脅威に対する両国は、安全保障協力を強化し、その水準は史上最高レベルに達する。国連海洋法条約に基づき仲裁プロセスを選択したフィリピンの対応から日本が学ぶべき点は多い。フィリピンの国際安全保障専門家が考える対中戦略とは。

新局面に入った仲裁プロセス

 2013年6月21日、国際海洋法裁判所(ITLOS)の柳井俊二所長はフィリピンのフランシス・ハルデレーザ訟務長官に、南シナ海の海域および陸地に対する中国の領有権主張について、フィリピンが起こした訴えを審理する仲裁法廷の5人の仲裁人(判事に相当)を任命し終えたと伝えた。仲裁人の任命は、1月のフィリピンの提訴で始まった国連海洋法条約(UNCLOS)に基づく調停プロセスが新局面に入ったことを意味している。

 調停要請には幾多の争点があるが、最も重要なのは、中国が南シナ海のほぼ全域を中国領の一部と主張する根拠としている「9点の破線(九段線)」の適法性だ。フィリピン政府がこうした行動に出たのは、南シナ海を巡る自国(および他の東南アジア諸国)との海洋紛争で自己主張を強める中国に対し、取り得る選択肢が狭まっているからだ。

 09年3月10日、グロリア・アロヨ大統領(当時)はフィリピンの領海の基線を再定義する法律に署名した。基線の定義はUNCLOSの条項を順守するために行われたもので、南シナ海周辺の陸地についてやはり領有権を主張するその他東南アジア諸国も同様のことをした。

 法の制定に対する中国の抗議は予想されていたが、これほど真剣な抗議になるとは想定外だった。フィリピンは、一方的に領有権を主張したというよりは、むしろUNCLOSに課された期日を守ろうとしていた。

6月にマニラ南部マカティ郊外で行われた、中国の南シナ海における不法侵入と密漁に反対するデモの様子 (提供:AP/アフロ)

 ところが中国政府は、フィリピンは東南アジア諸国連合(ASEAN)の「南シナ海における関係国の行動宣言(DOC)」の精神に反していると主張した。DOCとは法的拘束力のない合意事項で、基本的に、署名国(中国とフィリピンを含む)に対し、南シナ海の周辺海域および陸地の現状を変えるような活動にかかわらないよう要請するものだ。

 法律の署名後、この海域でフィリピンの漁師が中国から嫌がらせを受けた事件の報告が増えると同時に、同海域で目撃される中国の巡視艇の数も増えた。また、事実として公式には確認されていないが、中国空軍の軍用機による上空通過も報告されている。

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ハーマン・クラフト(Herman Joseph S. Kraft)

フィリピン大学ディリマン校政治学部准教授

1993年以降、東南アジアおよびアジア太平洋地域全般の安全保障に関する非公式対話メカニズムに関与し、現在、フィリピン政治学会(PPSA)会長も務める。専門は、国際安全保障と比較政治学(東南アジアの民主化と人権含む)。

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