米国のジョー・バイデン大統領と共和党指導部は、債務上限問題をめぐって交渉を繰り広げている。ジャネット・イエレン財務長官は債務上限を引き上げなければ2023年6月1日にも政府が債務支払いを履行できなくなり、米国債が史上初めて債務不履行(デフォルト)になる恐れがあるとの見通しを示した。
2011年には債務上限に関する交渉がもつれた結果、米国債の格下げにつながった。米国経済のみならず世界経済が大混乱に陥る可能性があるため、金融市場では協議のゆくえに注目が集まっている。
今回の記事では、債務上限問題とは何か? なぜ問題が発生するのか? 時折世界を騒がせる米国の連邦政府一時閉鎖問題と何か違うのか? 米国世論はこの問題をどう見ているのか? 債務上限問題をめぐる政党間の立場の違いは? などの点について解説することにしたい。
債務上限問題とは?
連邦政府ができる借金の上限(発行できる国債などの総額)は法律で定められており、これが債務上限と呼ばれるものである。米国の会計検査院によれば、債務上限として具体的な額を定めているのは米国とデンマークの2カ国だけだが、デンマークの場合は極めて高く設定されているために問題となることはほぼないとのことである。
その他の多くの国では、債務残高の上限を国内総生産(GDP)比で何%という形で定めている。欧州連合(EU)は加盟国に対する財政規律要件として、債務残高がGDP比60%を超えないよう求めている(ただし、イタリアなど超えている国もある)。
米国の債務残高は2022年度末でGDP比97%(州などに対する政府間債権も含めれば125%)で多くのEU諸国より割合が高いが、250%超という主要先進国の中で最も高い日本と比べると少ない。ちなみに、日本は債務上限が定められていない。
上限を引き上げるには連邦議会の承認が必要となるが、可能な限り無条件での引き上げを求める民主党と、引き上げには大規模な財政支出の削減が必要だとする共和党の間で駆け引きが行われている。引き上げが認められなければ国債の元本償還や利払いに回す資金が調達できなくなり、債務不履行(デフォルト)に陥る。