ベテラン経済記者の眼

2013年8月20日

»著者プロフィール

 お盆休みがあけ、猛暑の中で再始動という方もいるだろうが、多くの企業では8月中は交代で夏休みを取っていると想像する。メディアの世界も同じで、みんなそれぞれ夏休みをとるうえ、世の中の動きが全体的に鈍くなるので、新聞やテレビのニュースも国内ネタはどうしても「夏枯れ」となる。このため事前に仕込んだ連載やまとめ記事が多くなるのだが、こうした時期でもストレートニュースが出てくる分野がある。その代表例が、内閣府が発表する国内総生産(GDP)の速報値だ。4~6月期のGDP速報値は例年、8月中旬に発表され、夏休みシーズンの貴重な「生ニュース」として大きく扱われる。

増税の日経、中立的な朝日・産経・毎日

 しかし今年は別の意味で大きな意味を持っていた。法律では来年4月から消費税率を5%から8%に増税すると規定しているが、政府が秋に消費税引き上げの可否を最終的に判断するにあたり、4~6月期のGDPの結果が判断材料の1つになるからだ。

 8月12日に発表されたGDP速報値は、物価変動などの影響を除いた実質成長率が年率換算で2.6%増となり、3四半期(9カ月)連続のプラス成長となった。12日の夕刊段階では、新聞各紙やテレビのニュースは第一報としてほぼ事実関係のみを報じたが、民間シンクタンクなどの事前予想は実質成長率が3%台前半だった。プラス成長とはいえ市場予想を下回った結果をどう評価するのか、翌日の朝刊で各紙がどう論評するか注目された。

 13日付の朝刊では新聞ごとにそれぞれの主張を行い、濃淡がはっきり出ていた。消費税の予定通りの引き上げを強く主張したのは日本経済新聞だった。解説記事の中で日経は「来年4月の消費増税に向けた関門を1つ越えた」と指摘し、社説でも「景気の回復を支え、消費増税につなげよ」と見出しをとって強く主張した。

 中立的な立場を示したのが、朝日新聞と産経新聞、そして毎日新聞だった。ふだん両極端の論陣を張ることの多い朝日と産経だが、今回はなぜか主張が似通っていたのが興味深かった。朝日は1面で「可能性は3通り」と指摘した上で、2面で(1)予定通り8%に引き上げ、(2)先送り、(3)1%ずつ小刻みに引き上げ、の3つのシナリオを提示し、それぞれのメリット・デメリットを分析した。産経は、「消費が先導 好循環」と評価する一方で「欠く決定打、政権内にも慎重論」と別の見方も提示し、バランスをとった。社説でも「首相は複合的な視点もて」と主張し、GDP以外にも様々な指標の変化を評価するよう求めた。

 毎日は、社説では「年率2.6%増というのは堅調な数字」「消費増税に進む経済的な基盤は固まりつつあるようにみえる」とする一方、解説記事では「増税 決め手不足」と指摘し、「1%ずつ小刻みに消費税を引き上げよ」と主張する安倍首相のブレーン、本田悦朗・内閣官房参与のインタビューを大きく掲載するなど、紙面全体で両論併記の形をとっていた。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る