イシンバエワも支持?
ロシアで強まる同性愛者への弾圧
高まるソチ五輪ボイコットの声


廣瀬陽子 (ひろせ・ようこ)  慶應義塾大学総合政策学部准教授

1972年東京生まれ。専門は国際政治、コーカサスを中心とした旧ソ連地域研究、紛争・平和研究。主な著作に『旧ソ連地域と紛争――石油・民族・テロをめぐる地政学』(慶應義塾大学出版会)、『強権と不安の超大国・ロシア――旧ソ連諸国から見た「光と影」』(光文社新書)、『コーカサス――国際関係の十字路』(集英社新書)【2009年アジア太平洋賞特別賞受賞】など。

解体 ロシア外交

紛争、エネルギー、政治、経済など様々な外交カードを所持し、それを絶妙なタイミングで切るロシア。日本の隣人でありながらその内側がなかなか見えない大国に、不気味な印象さえ抱く。ロシアの外交、そしてその動きの背景を、ロシアと周辺国事情に詳しい著者が読み解く。

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今年6月26日、米国の連邦最高裁が同性婚者にも異性婚者と平等の権利を保障するという判決を下したことに同性婚の支持者や人権擁護の立場の人々が沸いた。ただし、本判決は全米に及ぶものではなく、南部を中心とした少なくない州では当分、同性婚は認められそうもない。それでも、この判決が持つ意味は大きい。

ニューヨークで行われたLGBTの様子 (筆者撮影)

 このこともあって、ニューヨークで6月30日に行なわれた恒例の「LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)プライド・フェスティバル)」は祝賀ムードで盛り上がった。ロシアや旧ソ連諸国からも、かなりのLGBT支援者が参加していた(写真参照)。このようなパレードやイベントは、ニューヨークが発祥だが、現在、同時に世界各地で行なわれている。ロシアでもモスクワやサンクトペテルブルグなどで行なわれたが、当局に弾圧され、流血の惨事となった。

同性愛者への弾圧 ロシアでは合法

 ロシアでは同性愛者への対応が真逆のベクトルに進んでいる。同性愛者が少なくないにもかかわらず、彼らに対してはあからさまな嫌がらせがある。同性愛者だと分かったとたん、殴られて死亡するような事件も起きているが、そのような事件に対しても、余り反応がなく、社会が概して同性愛者に対するあたたかい目を持っていないのは明らかだ。

 実際、ロシアの独立系調査機関である「レヴァダ・センター」が、今年の4月に「同性愛者は異性愛者と同じ権利を付与されるべきか」どうかについての意識調査を行なったところ、ロシア人の39%が賛成だと答えたのに対し、47%が反対の立場を示したという。

 上記のLGBTのパレード弾圧も、モスクワでは実は合法だ。2012年8月16日、モスクワ市裁判所は、モスクワでのゲイ・パレード開催を向こう100年間禁止するとのモスクワ市政府の決定を合法と認める判決を再び出したのだ。それに先立ち、モスクワ市政府は、2012年3月から2112年3月まで、100年間にわたりゲイ・パレードを禁止すると決定していた。これまで、何度も同様のパレードは行なわれてきたが、そのたびに厳しい弾圧があった。

 そのような中で、ロシアのプーチン大統領は、6月30日までに、「同性愛のプロパガンダ行為に罰金を科すことを定めた法案(以後、「反プロパガンダ法」)」に署名し、同法が成立した。また、プーチンは、「宗教信者の感情を害した者に禁錮刑と罰金を科す法案」にも署名し、同法も成立させた。

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「解体 ロシア外交」

著者

廣瀬陽子(ひろせ・ようこ)

慶應義塾大学総合政策学部准教授

1972年東京生まれ。専門は国際政治、コーカサスを中心とした旧ソ連地域研究、紛争・平和研究。主な著作に『旧ソ連地域と紛争――石油・民族・テロをめぐる地政学』(慶應義塾大学出版会)、『強権と不安の超大国・ロシア――旧ソ連諸国から見た「光と影」』(光文社新書)、『コーカサス――国際関係の十字路』(集英社新書)【2009年アジア太平洋賞特別賞受賞】など。

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